2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト上皮成長因子受容体変異肺癌に対するチロシンキナーゼ阻害剤の効果に関する検討
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22700916
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宗 淳一 岡山大学, 大学病院, 助教 (90559890)
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Keywords | EGFR変異 / EGFR-TK1 / 獲得耐性 / FAK阻害剤 / HSO90阻害剤 |
Research Abstract |
EGFR遺伝子変異陽性肺癌は分子標的薬であるEGFRチロシンキナーゼ(TK)阻害剤に対して高い感受性を示す。しかし、TK阻害剤治療感受性を示した症例の多くは経過により耐性化を示すこともわかっており、TK阻害剤の感受性・耐性化機構の解明と耐性例での治療法確立は重要である。遺伝子の蛋白への翻訳を調節しているmicroRNA(miRNA)は、その発現異常が多くの癌における癌関連蛋白質の発現異常を引き起こす一因となっており、EGFR-TK阻害剤感受性機構および耐性化機構に関与している蛋白質群の発現をmiRNAが制御していることが予想される。本研究ではEGFR遺伝子変異陽性肺癌、特にEGFR-TK阻害剤耐性化肺癌に対し、1)EGFR-TK阻害剤の効果・耐性規定因子としてmiRNA発現の網羅的解析と候補miRNAの機能解析、2)新規分子標的薬であるFocal adhesion kinase (FAK)阻害剤(TAE226)の効果を検討することで、分子標的薬剤によるEGFR変異陽性肺癌の新規個別化治療を目指した研究を行う。 これまでEGFR変異陽性肺癌細胞株PC-9を親株としたTK阻害剤耐性株をすでに作成、樹立した(計9クローン)。同様に、EGFR変異株であるHCC827の耐性株を作成・樹立した(計3クローン)。一部の確立した耐性株と親株のmiRNA発現を網羅的解析により比較検討をすでに行っており、今後変動のあるmiRNAを定量的PCE法で確認、決定する予定である。また、EGFR変異株はEGFR野生型株と比較し、リン酸化EGFRの抑制が低濃度のTAE226処理で誘導されることをすでに確認している。さらにEGFR変異蛋白とEGFR野生型蛋白に対するTAE226の結合能の比較を行い、変異蛋白は野生型に比較して結合能が高いことも見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
耐性株の樹立・TAE226の抗腫瘍効果については予定通り進んでいる。今後miRNAの網羅的解析と機能分析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は確立した耐性株と親株のmiRNA発現をmiRNAアレイで比較検討し、変動のあるmiRNAを定量的PCR法で確認、決定する予定だが、これまでいくつかの細胞株でmiRNAアレイによる比較を行っており、さらなる検討を行い、耐性化に関係しているmiRNAの同定を試みる。また現在TAE226のクリスタル構造を確認し、EGFRチロシンキナーゼのATP結合部位との親和性を構造的に検討している。現在、マウスモデルを用いたin vivoにおけるTAE226の効果を検討しており、これらの結果をもとにTAE226の持つEGFR変異特異的な抗腫瘍効果について、論文執筆を行う予定である。
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