2011 Fiscal Year Annual Research Report
海洋細菌がもつプロテオロドプシンの光受容による地球規模炭素循環の支配
Project/Area Number |
22710004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉澤 晋 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (00553108)
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Keywords | プロテオロドプシン / 光従属栄養 / Flavobacteria / 物質循環 |
Research Abstract |
本研究は海洋細菌がもつプロテオロドプシン(以下PR)が地球規模炭素循環にどの程度寄与しているのかを解明する事を目的としている。平成22年度は難培養性であるPR保持細菌の多数の分離培養に成功し、それらの株を用いてPRの生物機能を野生株で測定する事に世界で初めて成功した。平成23年度はPRが受け取る太陽光エネルギー量を推定する為に、PRのプロトン排出スピードの定量化を行った。具体的な測定内容を以下に示す。 1.培養細胞株のプロトンポンプ活性をバルクで測定する。 2.細胞内に含まれるPRタンパク質量を、吸光度法およびタンパク質抽出法の検討をおこない算出する。 3.バルク内に含まれる細胞数を蛍光顕微鏡を用いて算出する。 これらのデータを統合し、1PRタンパク質あたりのプロトン排出数を見積もり、さらに1細胞あたりのプロトン排出数を計算する。平成23年度中に一株でこれらの値の測定に成功した。わずか1株でではあるが、本研究でPRが受け取る光エネルギー量の定量化に成功したことは、今後地球規模炭素循環に対するPRの寄与率を解明する大きな成果であると考える。仮に本研究で算出した値を元にPRの外洋表層海水中での炭素循環への寄与率を算出すると、呼吸によって得られるエネルギーの約0.3-15%に相当するエネルギーをPRは太陽光から受け取っている事になる。今後、PRの機能解析を複数の株、複数の培養条件で解析することで、これまでクロロフィル型の光合成のみを考慮して作り上げられてきた物質循環モデルに大きな修正を迫る事は間違いないと考えられる。
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