2011 Fiscal Year Annual Research Report
安定・放射性同位体解析を用いた地下水流入の沿岸水産資源への影響評価
Project/Area Number |
22710012
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
梅澤 有 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 助教 (50442538)
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Keywords | 海洋科学 / 海洋物理・陸水学 / 地球化学 / 水産学 / 環境分析 |
Research Abstract |
RaDeCC(Radium Delayed Coincidence Counter)システムを立ち上げて、水道水や長崎県沿岸水をテスト試料水としてMnO_2ファイバーに通して、水中に含まれるRaを吸着させてRa核種の分析テストを行ったが、学内における下限数量以下のRa核種の使用に関する承認が下りず(2011年3月の原発事故で、学内の放射性管理委員会の主要メンバーが多忙であった)、値のキャリブレーションが出来なかった。 そこで、地下水湧出とその分布に関しては、22年度の成果(^<222>Rnによる評価)を利用し、有明海湾口部(島原湾~橘湾)において、低次生態系を支える栄養塩の起源(地下水由来栄養塩も含む)と、高次消費者への移送過程について、CTD観測により橘湾の水平・鉛直方向の水塊構造を明らかにし、比色分析で栄養塩の分布を調べると共に、代表的な無機態窒素である硝酸塩の窒素・酸素同位体比を用いた解析、及び、仔稚魚の代表的な餌として、カイアシ類や十脚甲殻類のハルマンスナモグリのゾエア幼生、画分別の懸濁態有機物の炭素・窒素安定同位体比を用いて解析を行った。 栄養塩の供給源に関しては、陸水(δ^<15>N=8~9‰)・外洋底層水(δ^<15>N=4~5‰)に加えて、大気降下物(δ^<15>N=0~1‰)や、再生栄養塩(NH_4とNO_2分布から)の寄与があることを明らかにすることができ、本海域が、気候変動等の環境変化に対して、栄養塩供給の点では、脆弱でないことが明らかとなった。 また、室内飼育実験の結果、スナモグリ幼生が動物プランクトンと植物プランクトンの混合食であることと、動物プランクトンの摂餌に伴う同位体効果(△δ^<15>N=3.3‰、△δ^<13>C=0.5‰)を明らかにすることに成功した。現場で得られた安定同位体データと合せて解析することで、スナモグリ幼生は20μm以下のナノ植物プランクトンを多く含む植物プランクトンと動物プランクトンを食物源としている可能性が高いということが分かった。 一連の結果より、有明海湾口部における低次生態系と高次生態系のつながりを明らかにすることが出来た。
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Research Products
(8 results)