2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22710163
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
山崎 栄一 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (00352360)
|
Keywords | 公法学 / 火災 / 消防 / 福祉国家 / 安全 / 韓国 / 高齢者 / 障害者 |
Research Abstract |
平成23年度は、福祉国家における防火対策のベースとなる法システムのあり方について検討を行った。 憲法学の視点から、基本権保護義務論から、立法-行政-司法の各機関に対してどのような役割を委ねるべきかについて明らかにしていった。また、現代における国家への期待に答えるべく単なる自由国家原理としての基本権保護義務からの脱却を図るべく、基本権保護義務と社会国家原理との融合可能性についても、過去の連邦憲法裁判所の判例からの分析を行った。 行政法学の視点から、最近の研究成果として、「危険の除去・防止のための(行政)法システム(及びその考察)」から、「安全・安心の創出のための法システム(及びその考察)」が図られようとしている事も明らかとなった〔野口貴公美=幸田雅治編『安全・安心の行政法学』ぎょうせい(2009年)2~5頁〕。この法システムの枠組みを活用することで、高齢者・障害者も安心して生活することができるような居住スタイルの確保に向けての法規制のビジョンを提示することができるのではないかと考えている。 安全を確保するための行政手法を再検討するため、比較法的な視点からの検討を行うべく、韓国における社会的弱者に対する防火対策の現状につき、調査を行った。ソウル市江南消防署においては、社会的弱者に対する消防福祉サービスの現状をお伺いすることができた。そこでは、独居老人・障がい者の居宅に対する消火器や火災警報器の無料支給や福祉施設における消防設備等の点検、低所得者の密集地域における消防設備の設置や啓発活動が展開されていた。また、地域における消防力を向上されるために、子どもに対する消防教育、市民ボランティアの育成、市民との交流が多い従業員(保険外交員・集配員・ガス検針員等)による安全見守りといった活動が展開されていた。これらの手法は、規制によらないソフト的な手法の展開であり、日本における応用が期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
憲法学の視点からの検討は、研究計画通りの進行と結論を得ることができた。さらに、行政法学からの示唆を得ることで、法システムの理論的基礎付けを強化することができた。このような、憲法学と行政法学との連携は、これからの公法学の発展に寄与するであろう。 このような法システムに関する抽象的な検討に加えて、韓国における現地調査によって具体的な行政手法の検討に向けた準備作業ができたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
法システムの理論的基礎付けができたこともあり、具体的な法システムの再構築ならびに政策提言に向けた最終作業に取りかかりたい。 平成23年度は、東日本大震災の影響もあり国内における実地調査が難しい面があったが、韓国における現地調査によって、ソフト的な手法の幅広さを学んだ。引き続き、どのようなソフト的な手法が講じられているのかについて、国内における実地調査を積極的に進めていきたい。
|
Research Products
(3 results)