2011 Fiscal Year Annual Research Report
堆積物として残らないごく小規模噴火の痕跡を火山灰土中から検出する試み
Project/Area Number |
22710170
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮本 毅 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (90292309)
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Keywords | 白頭山 / 霧島火山群 / 火山灰土 / 火山灰 / 粘土鉱物 / 小規模噴火 / 水蒸気噴火 / 黄砂 |
Research Abstract |
本研究は明瞭な噴出物として地層中に残らないごく小規模噴火の痕跡を火山灰土層中から見いだすことで、より詳細な火山噴火史を構築することにある。以上の目的に対し、火山灰土壌層中に隠れた噴火の痕跡として粘土鉱物に着目したが、噴火を示唆するスメクタイトの含有量はごく少量のため、その分析方法を確立する必要があり、今年度もその方法について引き続き検討を行った。昨年度分析を試みた中国・白頭山で採取した湖底コア試料について、試料を再処理することで粘土鉱物の濃縮を行った。その結果、黄砂成分と一致する粘土鉱物を見いだすことは可能となったが、噴火を示すスメクタイトの有無をいえるまでは現状では至っていない。白頭山コア試料では10世紀巨大噴火を挟んだ上下の堆積物で、下位では処理なしで明瞭な粘土鉱物のピークを得られるなどその含有量が異なる。黄砂の堆積量がほぼ変わらないと仮定すると下位は圧密の効果が大きく粘土鉱物の濃縮がかかっているといえ、その層厚から堆積期間を推定すると10世紀噴火以前は少なくとも2000-2500年間は大規模な噴火活動を行っていないことが判明した。白頭山の大規模噴火の周期は1300年程度とされてきたが、実際にはこれよりも長いと結論づけられた。2011年3月に噴火活動を開始した霧島火山群・新燃岳周辺地域において火山灰土壌、及び火山灰を採取し、同様な分析を行った。2011年噴火とその前の享保噴火では、大規模なマグマ活動に先行して小規模な水蒸気噴火が発生している。粘土質火山灰層として残されている試料ではスメクタイトの存在を確認でき、白頭山試料の場合と同様にスメクタイトの有無が小規模噴火を特徴づけることは判明した。しかし、それらの下位の火山灰土層からは黄砂に相当する粘土鉱物の存在は確認できるが、スメクタイトの有無については方法論とともに再検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象とする火山での試料を採取し、分析を行うなどの点では順調に進行しているが、当初予定していた方法では火山灰土中から小規模噴火起源と推定される粘土鉱物を同定することができず、その検出方法がまだ確立できていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
非噴火時の堆積物中との小規模噴火における粘土鉱物の組み合わせが異なることから、粘土鉱物を火山灰土中から検出することでより高精細な火山活動史を編むことが可能である。ただし火山灰土中の小規模噴火の痕跡を示すと考えられる粘土鉱物は、ごく微量であるためそれらを検出する方法を早期に確立する。その方策として試料の濃縮をかけることで粘土鉱物のみを抽出していくが、これに加え分析に供与した火山灰土試料が試料の濃縮過程において不足していたことも原因の1つであると考えられるため、国内の火山については再度試料の採取を行い、検出の精度を上げていくこととする。
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