2011 Fiscal Year Annual Research Report
COPDバイオマーカー診断法の確立を目指したdesmosine類の創製
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22710224
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
臼杵 豊展 上智大学, 理工学部, 助教 (50514535)
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Keywords | COPD / エラスチン / クロスカップリング / 全合成 / バイオマーカー / アミノ酸 |
Research Abstract |
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、断続的な呼吸困難などが長期間続く肺の生活習慣病であり、世界で死亡原因の第4位を占めている。肺胞を司る弾性繊維エラスチンの分解物desmosineとその異性体isodesmosineが、症状の進行に伴って生体内濃度が上昇するため、COPDのバイオマーカーとして注目されている。本研究ではCOPDバイオマーカー診断法の確立を目指し、desmosine類の創製研究を展開してきた。昨年度、成功したdesmosineの最初の全合成に基づき、今年度はさらに次のように研究を展開した。 1.昨年度、13段階・総収率11%で達成したdesmosine全合成について、更なる合成ルートの検討を行なった結果、パラジウム触媒によるクロスカップリング反応を薗頭-根岸の順番で遂行することにより、6段階・総収率15%と短段階かつ高収率でdesmosineの第二世代全合成を達成するという重要な成果が得られた。 2.確立した合成ルートを用いることによって、分子内に確実に同位体標識したdesmosineの創製にも成功した。これにより、desmosineの厳密な定量法を実現する研究へ展開することができた。 3.もう一つのバイオマーカーであるisodesmosineについても、段階的な根岸-薗頭-根岸の順番でクロスカップリング反応を行うことにより、4つのアミノ酸に保護基が付与したisodesmosineの合成に成功した。 4.エラスチンの構造解析に向け、ピリジン環を含む環状ペプチド型desmosineの合成研究も開始した結果、各種アミノ酸セグメントの調製が完了した。 以上のように、desmosineの全合成から同位体標識体の創製、環状ペプチドの調製と、当初の研究計画通りに進行しており、最終年度へ向けて研究を進展していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
desmosineの全合成の達成、isodesmosineの全合成研究の展開、同位体標識desmosineの創製、環状ペプチド型desmosineの調製と、当初の研究計画通りに進行しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、まずisodesmosineの世界初の全合成達成が挙げられる。また、COPDバイオマーカー診断法に向けたdesmosineの厳密定量法の確立を目指す。一方、環状ペプチド型desmosineを網羅的に創製した後に、エラスチンの架橋部位の構造推定への展開も図る。そのためには、生体由来試料であるエラスチンを取り扱う研究へシフトする必要があり、酵素反応や機器分析等を駆使して進めていきたい。
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