2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22720017
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
周藤 多紀 山口大学, 人文学部, 准教授 (50571733)
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Keywords | ポルピュリオス / ボエティウス / イアンブリコス / 論理学 |
Research Abstract |
1ボエティウスとポルピュリオスの『カテゴリー論注解』、イアンブリコスの『カテゴリー論注解』断片の比較研究を行った。資料収集と研究上の討論のために、8月コペンハーゲン大学を訪問した。集めた資料を検討した結果、ボエティウスとポルピュリオスの注解はかなり類似しているが、いくつかの部分において(おそらく間接的な)イアンブリコスめ影饗が認められた。研究の成果を中世哲学会のプラトン主義シンポジウム「中世におけるプラトニズム」で発表した。発表後、原稿を推敲し、論文として提出した。ボエティウスの中のプラトン主義については、従来『哲学の慰め』や神学論文をもとに考察されることがほとんどであったが、上述論文ではボエティウスがアリストテレスにかなり忠実でありながら、どのような意味でプラトン主義者と言えるのかということを、『哲学の慰め』や神学論文だけではなく、アリストテレス注解書を含めた論理学著作をもとに考察している。 2ポルピュリオスの論理学・言語哲学を理解するための貴重な資料である、ボエティウスの『命題論注解』研究を英文単著として出版した。5月上旬に再査読通過の報を受けて、6月に謝辞等を含む最終稿を提出、8月中旬から10月上旬にかけて校正と索引づくりを行い、11月に発売された(カバーでは20012年となっている)。当該領域では約20年ぶりの単著の出版であって、私の研究書は最近20年の周辺領域の研究の進展に十分に配慮したものとなっている。 3一般向けの哲学史入門書のために執筆した古代末期の言語哲学(ボエティウスのそれを含む)の概説の原稿を校正し、出版した。 4.一部ポルピュリオスの影響を受けているとみられるアウグスティヌスの言語哲学(とくに嘘の問題)についての論文原稿を校正し、出版した。 5.『ケンブリッジコンパニオン中世哲学史』(京都大学学術出版会より2012年に出版予定)の言語哲学の章を訳出を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初はボエティウスの論理学研究英文単著を出版を、平成22年度中に行うつもりであった。しかしながら、最初の査読結果をうけとるまでに半年程かかり、さらに査読者によって構成上の大幅な修正を要求されたため、出版が本年度(平成24年度)になった。書き直しのプロセスやシンポジウム提題によってポルピュリオスの影響、ポルピュリオスの周辺についての研究は深まったが、ポルピュリオス自身の研究がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はポルピュリオスの著作の中でも最も現代的意義があると想定される『肉食の禁忌について』の研究に移行するつもりである。当該著作については、研究書や論文はあまりないものの、近代語訳は何種類かあるので、既存訳を十分に活用して、哲学的に重要な部分に絞って研究をすすめる。そして、研究成果が幅広く理解されるような公表方法を考えつつ、発表・論文を準備していく。
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