2011 Fiscal Year Annual Research Report
死者を通じて形成される世界観に関する研究―「ナショナルな墓地」を手がかりとして
Project/Area Number |
22720027
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 悟 神戸大学, 国際協力研究科, 学術推進研究員 (90526055)
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Keywords | 国立墓地 / 国家報勲 / 葬墓文化 / 慰霊・追悼 / 公共性 / 韓国 / 日本 |
Research Abstract |
本研究は、韓国と日本における「ナショナルな墓地」を通じた死者の慰霊追悼の研究を手がかりとし、ナショナリズムに関する事例研究・比較研究を進め、その含意の読み解きを試みることを目的としている。この目的のため、研究第2年度である平成23年度において達成が目指されたのは、第一に韓国国立墓地の内部的な構成ロジックの調査分析、第二に韓国のいわゆる「国家報勲」政策に対する歴史的分析、第三に、韓国国立墓地・「国家報勲」政策の研究を、近代日本の国家祭祀・戦死者慰霊に関する研究と接続し、比較研究としてさらに発展させること、であった。 第一・第二の課題については、前年度に実施したフィールドワークやその後の文献調査の成果を踏まえ、韓国国立墓地とその背景にある「国家報勲」政策について考察する論考を、平成23年6月に公表した。また、それらの前提条件となる韓国のいわゆる「葬墓文化」に関する考察についても、平成24年3月に論考を公表した。これらは、現在も変容し続けている韓国の国立墓地とその背景にある「国家報勲」政策や「葬墓文化」の現状を把握したうえで分析を加えた、最新のケーススタディであり、今後こうしたテーマの研究をさらに発展させるための基盤となる研究として位置づけられる。 また、第三の課題については、平成23年5月28日に開催された研究会における、日本の死者慰霊・追悼の諸問題を専門とする研究者との議論をもとに、その後の研究成果を盛り込んだ論考を、平成24年1月に公刊している。これは、「ナショナルな墓地」をめぐる韓国研究と日本研究とを接続するための基礎的研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を進める上での基礎となるフィールドワークと資料収集については、計画していた水準をほぼ満たすレベルで進展している。また、計画で設定した研究課題についても、複数の論考を公表するに至っており、次年度における研究の発展も期待することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の進展を引き継いで、なお残る課題についてはさらに考察を進めていくものとする。 なお、当初の計画には直接的に盛り込まれていなかった課題として、韓国の「ナショナルな墓地」が成立・変容している背景としての「葬墓文化の変容」という問題が浮上してきている。韓国研究パートの内容を深めるためにはこの問題にも取り組む必要があるため、当初の計画よりも考察の範囲を広げ、「葬墓文化のもとで展開する国家報勲政策と国立墓地」という視点から、今後の考察を整理していくものとする。
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Research Products
(4 results)