2011 Fiscal Year Annual Research Report
平安朝文学にあらわれる装束・調度品描写研究のための近世有職故実書研究
Project/Area Number |
22720095
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
森田 直美 国文学研究資料館, 研究部, 特定研究員 (10552945)
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Keywords | 齋藤彦麿 / 松岡行義 / 伊勢貞丈 / 壺井義知 / 近世有識学 / 近世期の平安朝文学研究 |
Research Abstract |
平成23年度は、前年度から引き続き、齋藤彦麿・松岡行義の著作に関する調査研究を重点的に行った。またこれと同時に、彦麿・行義に影響を与えた壺井義知・伊勢貞丈らの著作調査・研究を行い、江戸中期から後期へ向かって、有職故実研究と平安朝文学研究との関係がどのように引き継がれているのか、もしくはどのような変化を見せているのか、その継承と変容の様相を考察した。 具体的な成果として、まず、松岡行義による、『源氏物語』を素材とした有職の書、『源語図抄』の翻刻発表が挙げられる(森田・赤澤真理氏・伊永陽子氏共著「宮内庁書陵部蔵『源語図抄』翻刻」)。この作業を通し、行義の有職学には、原点回帰の傾向が強く見受けられることを明らかにできた。すなわち、近世期に成立した文学・有職に関する考証書ばかりに依るのではなく、『雅亮装束抄』や『西宮記』といった平安期成立の有職書に依拠し、『源氏』にあらわれる装束・調度・建築の当時的な姿を明らかにしようとする姿勢が強いのである。こうした姿勢は、近世期における平安朝文学・文化研究史において、特筆すべきものだと言える。また、松岡行義による『源氏物語』の問答書『源語問答』翻刻が終了し、現在掲載誌を模索している。 また、齋藤彦麿の著作の内、特に注目される『勢語図説抄』の伝本調査を通し、鉄心斎文庫蔵本に収載されている装束図の特異性について明らかにした(拙著「鉄心斎文庫蔵『勢語図抄』の装束図彩色に関する小考」)。また同論文は、鉄心斎文庫蔵本の装束彩色に関する特徴を明らかにするにとどまらず、彦麿が、有職の師である伊勢貞丈や、契沖や馬淵といった前代の文学研究者に影響を受けつつも、独自の視点をもって『伊勢物語』の動植物・装束・調度品の実態解明を志していたことを明らかにすることができた。
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Research Products
(1 results)