2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヴィクトリア朝詩学の確立と破綻―文芸雑誌上の論議を手がかりに
Project/Area Number |
22720102
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
関 良子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 講師 (10570624)
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Keywords | 英米文学 / 文学論 / 詩学 / ヴィクトリア朝 / デジタル・アーカイヴ / 文芸雑誌 |
Research Abstract |
研究の初年度である本年度は、当初の計画に沿って以下の手順で研究を行なった。 まず、前半は19世紀、20世紀の文芸雑誌研究の基軸となる資料『復刻編集版19世紀新聞・雑誌記事集成』(Edition Synapse)、Dictionary of Nineteenth-Century Journalism (British Library)、The Oxford Critical and Cultural History of Modernist Magazines (Oxford UP)等を購入、通読して、文芸雑誌のもつ社会的意義について理解を深めた。また、ヴィクトリア朝詩学・モダニズム詩学について論じた研究書や学生向け入門書(Companion)を多く収集し、出版年順に内容を整理することで、二つの時代の詩学がこれまでどのように捉えられ、時代を経るうちにどのように変容しているかを探った。 中盤においては、F.R.Leavisが英文学研究に与えた影響力と、彼のヴィクトリア朝詩や同時代詩の捉え方がいかに当時と現代に大きな影響を与えているかを考察した。具体的には彼の雑誌Scrutinyへの投稿評論および未刊の博士論文(ケンブリッジ大学図書館所蔵)を調査した。この研究側面に関しては、次年度にさらに考察を進め、研究成果を公表したいと考えている。 本年度終盤からは、19世紀のソネット復興と20世紀初頭のソネット批判の中にヴィクトリア朝詩学の「確立と破綻」の一端を見ることができるのではないかと考察に着手した。この研究成果は次年度秋に学会シンポジウムで発表する予定である。 これらに並行して、本研究の副課題ともいえるデジタル・アーカイヴの研究への利用については、イギリス・アメリカ・カナダの研究者らと、国際学会での議論やインターネットを通じた意見交換を行なった。また、大英図書館で開催されている展示企画Growing Knowledgeの、研究者向け内覧会に参加し、同図書館の司書やロンドン大学の研究者から、デジタル・アーカイヴへの取り組みに関して、情報を収集し、意見交換を行なった。さらに、これまでの研究成果の一部を、論文「デジタル人文学が拓くヴィクトリア朝文芸雑誌研究の可能性」(『国際社会文化研究』第11巻)にて発表した。
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Research Products
(2 results)