2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヴィクトリア朝詩学の確立と破綻―文芸雑誌上の論議を手がかりに
Project/Area Number |
22720102
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
関 良子 高知大学, 教育研究部・人文社会科学系, 講師 (10570624)
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Keywords | 英米文学 / 文学論 / 詩学 / ヴィクトリア朝 / デジタル・アーカイヴ / 文芸雑誌 |
Research Abstract |
研究の二年次の本年度は、当初の計画と異なる点も若干あったが、以下の手順で研究を行なった。 まず、昨年度終盤から取り組んでいた、19世紀のソネット復興と20世紀初頭のソネット批判の考察に関して、研究成果をまとめ、10月に開催された阪大英文学会のシンポジウムで発表した。特に、ソネットが英詩に流入し隆盛を極めたルネサンス期の作品群は、詩の普遍性・不変性を謳う特徴が顕著であったのに対し、19世紀のソネットには詩の普遍性・不変性か薄れ、代替措置として可変性を「曖昧化」する傾向にあったことを論じ、そこにこそヴィクトリア朝詩学の特徴め一端が表出されている点を指摘した。 また、本研究の副課題、デジタル・アーカイヴの研究への利用については、6月にヴィクトリア大学(カナダ)で行なわれたDigital Humanities Summer Instituteに参加し、実際にデジタル・アーカイヴを制作している研究者や図書館司書らと建設的な討論をすることができ、相互認識を深められた。ここでの討論内容や昨年度から続けている考察内容に関しては、予定外に早く成果発表の機会を得られ、9月に開催された人文情報学推進協議会設立シンポジウム(国際)において研究発表を行なった。英語圏の国々におけるデジタル・アーカイヴやデジタル・ヒューマニティーズの動向が、「人文学分野におけるコンピュータ技術の応用」から「人文学と情報学の双方向的アプローチ」の重要性へと力点が椎移している点を指摘し、日本でのデジタル・ヒューマニティーズ研究においても人文学的視点を軽視しない姿勢が肝要であると主張した。 本年度終盤からは、昨年度に収集した資料をもとに、大西洋横断的なアプローチに取り組み、文芸雑誌等のメディアを介して、イギリス・アメリカ間で文学観や詩学がどのように意見交換され、相互に影響し合っていたかを考察している。この研究内容に関しては、次年度中に論文にまとめたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の予定であった20世紀初頭の文芸批評事情の検討に割く時間があまりなかった点では、当初の計画から多少の変更が生じた。しかし、予定外にデジタル・アーカイヴに関する研究発表の機会を得られ、国内外の研究者とデジタル・ヒューマニティーズの現状と問題点について討議できた点では、予定外の成果を上げることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、本年度は20世紀初頭の文芸批評事情の検討ができなかったため、次年度に取り組みたいと考えている。次年度は、まず本年度に研究発表した19世紀ソネット・リヴァイヴァルに関する論考を論文にまとめる。また、現在取り組んでいる大西洋横断的な19世紀文学観や詩学の相互影響に関して、論文にまとめる。次に、再度イギリスでの文献調査・資料収集を行なった上で、20世紀初頭の文芸批評事情について検討し、本研究課題の最終成果報告の機会を得たい。
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Research Products
(2 results)