2012 Fiscal Year Annual Research Report
日本型NHS(国民保健サービス)制度構想に向けた基礎的研究
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22730046
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
国京 則幸 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (10303520)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | NHS / 医療保障 / イギリス |
Research Abstract |
平成24(2012)年度は、補助金によって渡英し、現在のNHSの状況を調査するとともに、英国サウサンプトン大学にて研究交流を行った。特に、2012年保健および社会ケア法による改正の移行期(2013年~本格実施)であったため、改正内容および当該制度の変化が国内でどのように評価されているのかの把握に努めた。他方、社会実態的には、NHSに関するさまざまな新しい出来事(たとえば、NHS史上初の民間企業によるNHS病院運営、NHS史上初となる、NHSトラストの管財手続きの危機、など)が生じてきており、これらの意味するところを理解するためにも、改めて提供体制の法的枠組みの把握の重要性が生じてきている。当年度においては、学会レベルでの医療保障法研究者による研究会にて成果報告をするとともに、成果の一部は、加藤編著『世界の医療保障』の「イギリス」で公表した。日本の医療保障の問題状況との比較検討に必要なレベルまでの詳細な資料は引き続き執筆中であり、できるだけ早く公表する。他方、日本型NHSを構想するもととなっている日本の医療保障の問題状況について、いわゆる『ベヴァリッジ報告』が示したような所得保障の前提たる医療保障という観点とともに、最低限度の生活の一部をなす医療保障という発想とあわせて、現在の国保と生活保護(医療扶助)の接続問題に焦点を定めて制度的問題を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NHSの提供体制の概要については、既に公表している。ただし、新しい制度改革が行われ、かつこの改正が大きな改正であるため、まだ十分に検討できていない部分が残っている。また、提供体制を把握し整理していく中で、とりわけ、機関どうしの関係(提供責任主体と提供主体)などの細かな部分の把握や、NHSでのサービスの性質など、より根本にかかわる理解の不足を認識するようになった。そこで、この点について、さらに掘り下げて理解をしておく必要がある。また他方で、医療制度に関する制度改正も進んできており、この点についても情報収集および理解を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、イギリスNHSについての理解について、最新の改正による制度変更、法改正を体系的に改めて把握しなおすとともに、制度とは相対的に別個の問題であるNHSのより根本的な性質の理解に努め、これをまとめる。また、イギリスの医療状況と関係の深い、医療制度における近時の改正動向についても、日本の制度との比較を意識しつつ、把握する。 さらに、いわゆる『ベヴァリッジ報告』が示したような所得保障の前提たる医療保障という観点とともに、最低限度の生活の一部をなす医療保障という発想とあわせて、現在の国保と生活保護(医療扶助)の接続問題に焦点を定めて、日本の制度的問題を明らかにする。 その上で、日本型NHS構想について、意義や可能性等について、論文をまとめる。
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Research Products
(1 results)