2010 Fiscal Year Annual Research Report
石炭産業と地域社会-1930~50年代における地域間比較-
Project/Area Number |
22730277
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北澤 満 九州大学, 大学院・経済学研究院, 准教授 (10362261)
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Keywords | 石炭産業 / 炭鉱経営史 / 地域社会 |
Research Abstract |
本年は、研究対象地域のうち、主として北海道に関して研究を進め、そのうち両大戦間期における炭鉱労働者の雇傭状況について成果を報告し、論文として公刊した。 本年度の研究において明らかになったのは、以下の諸点である。第一に、1920年代においては、北海道と筑豊地域における鉱夫賃金の格差が大きかったが(北海道が高く、筑豊が低い)、昭和恐慌期の過程において、解消する(北海道の賃金が、筑豊並みに低下する)。この傾向は、大炭鉱企業について筑豊・北海道それぞれに所在する炭鉱を比較してみても同様であった。第二に、本稿が対象とした事例(三菱鉱業株式会社美唄砿業所・大夕張砿業所)においては、1920年代における鉱夫の属性は、従来の研究が描いてきた「渡り鉱夫」像(出身地は東北と朝鮮が中心であり、前職は鉱夫が多く、移動率が高い)に近いものであった。しかし、これは昭和恐慌期に大きく転換する。1930年代には北海道・東北出身者が中心を占め、前職については農業出身者が多数となった。他方で勤続年数については、長期勤続者の数も漸増するものの、昭和恐慌期における(自発的、および非自発的)離職者の不補充があった後に、33年から新規採用を増加させたため、1930年代半ばにおける勤続年数の構成に関しては、短期勤続者が中心となっていた。こうした劇的な変化の背後に、三菱美唄・大夕張両砿業所における積極的な機械導入があったことを指摘した。地域間比較の観点からみると、筑豊や三池では上記のような変化が生じなかった背景として、これらの地方においては当該期に保護鉱夫、および囚人労働の廃止問題があり、労働力需要のあり方が北海道とは異なっていたことを強調した。
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Research Products
(3 results)