2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730350
|
Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
吉田 智也 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (90456286)
|
Keywords | 公会計 / 財務会計 / 複式簿記 / 自治体経営 / 地方財政 |
Research Abstract |
平成23年においては、以下の研究成果を得た。 1.米国政府会計基準における資本的資産の減損処理の検討 平成23年においては、これまでに分析してきた米国政府会計制度における資本的資産(固定資産)情報の一部として、「資本的資産の減損処理」についての分析を行った。企業会計において、減損が行われる時には、認識・測定のいずれかにおいて、その資産から得られる将来キャッシュ・フローの割引現在価値の計算を利用する。しかし、米国政府会計制度において、行政活動に利用される資本的資産は、一般的に収益やキャッシュ・フローを生み出すことはないという。そうであれば、そのような資産の減損処理はどのように行われることになるのか。分析の結果、行政活動に利用される資本的資産の減損は、たとえば、その減損が物理的損傷による場合、その資産の用役提供能力(service utility)を復旧するための見積原価を利用して、減損による損失額を計算していた。このような会計処理は、過去の意思決定時点での失敗を明らかにすることができる可能性があることについても言及した。 2.米国政府会計基準審議会における概念フレームワーク「認識と測定」の検討 米国政府会計基準における概念フレームワークのうち、「財務諸表の構成要素」の検討に続き、それらの構成要素に関する「認識と測定」について、審議会による『予備的見解』(Preliminary Views)を分析した。具体的には、基準策定のデュー・プロセスにおいて、『公開草案』を作成する前段階として提示された『予備的見解』から、今後『概念書』に盛り込まれるであろう新しい諸概念の内容を分析し、それが今までの会計実務とそこで作成されている財務諸表にどのような影響を及ぼすのかを検討した。 3.米国政府会計発展史における固定資産情報の変遷の分析(継続) 財務諸表やそれを作成するための機構である複式簿記において、政府の財産の1つとして認識・測定されている「資本的資産」について、損益計算を必要としない政府会計においても、取得原価の配分計算であり、期間費用を発生させる「減価償却」を行うべきかどうかについて、その処理の妥当性を勘案し、検討する必要があると考えており、昨年度より継続して検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
米国政府会計制度が、その全体像を大きく変えうる「概念フレームワーク」の構築を順次進めており、その内容を詳細に検討するとともに、制度環境の異なるわが国において、それらがどのように適用可能かを考える必要がでてきており、当初の研究の目的から、若干の修正が必要となっていることは否めないが、研究成果となる論文等の執筆・投稿状況から、おおむね順調に進展していると感じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、これまで明らかになった諸論点についての継続的な調査・研究に加え、本研究課題の総括を視野に入れ、米国政府会計制度を、制度環境の異なるわが国において、どのような修正・変更を行うことで適用可能となるかといった点を考える必要がある。そのため、米国政府会計制度の歴史的変遷の分析から得られた知見をもとに理念的モデルのひな型を示すとともに、わが国の公会計の現状とその改革動向とのすり合わせを意識した研究を行う予定である。
|
Research Products
(3 results)