2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本型住宅システムの再編と家族生活・職業生活への影響に関する縦断的研究
Project/Area Number |
22730380
|
Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
村上 あかね 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (20470106)
|
Keywords | 福祉レジーム / 住宅 / 企業福祉 / 労働組合 / 家族と職業 / 家計 / 生活時間 / パネルデータ |
Research Abstract |
本研究の目的は(1)持家への移行のタイミングと促進要因、さらに(2)住宅取得が家族生活と職業生活におよぼす影響について明らかにすることにある。平成23年度は、以下の3つの研究を並行して進めた。 (1)インタビュー調査過去3年以内に関東圏で住宅を取得した30~50代の男女5名ずつ計10名を対象に、まずグループインタビューを行い、住宅取得のきっかけ、親からの援助の有無、住宅履歴と職業歴・家族歴との関連について全体像を把握した。インタビューの内容をもとに対象者を類型化し、さらに30代の女性1名、50代の男女1名ずつ計3名を選び、1対1のインタビューを行った。このような工夫をすることで、大勢の前では話しにくい家計の変化、家族関係や将来設計、賃貸住宅や社宅の不便さについて詳細に尋ねることができた。量的調査では捉えにくい「住宅」に関する主観的な意味づけも検討したところ、「子供のため」という理由が重要な要因として浮上した。また、結婚年齢が高い場合には、退職と子どもの大学進学と住宅ローンの返済期間が重なるというホワイトカラー特有のリスクがあるにもかかわらず住宅を取得せざるを得ない環境があることも見出された。 (2)社史・労働組合の資料の分析「総評」や「同盟」の資料を蒐集し、精査した。「総評」が住宅手当の支給と同時に公共住宅の建設を訴えていたこと、「同盟」は住宅に関心がないようだが、個別事例をみるとかならずしもそうとは言いきれないことを見出した。企業福祉の役割を検討することは非常に重要であり、統計データのより良い分析・解釈、福祉レジームという理論枠組みの再検討に貢献することが可能になる。 (3)パネルデータの分析持ち家の有無・取得と消費支出・生活時間の違い(およびそれらの変化)を分析し、職業階層による住宅ローンの負担感の違いを析出した。また、固定効果・変量効果モデルを用いた論文を公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インタビュー調査は完了し、テープ起こしも済ませている。インタビュー調査の結果は研究会で簡単な報告を行い、平成24年度以降の成果の公表の見通しを立てた。社史・労働組合の史料はほぼ蒐集を済ませ、整理・予備的な分析を行った。また、2本の論文を執筆する過程で、総務省だけではなく内閣府や国土交通省の統計資料、財形貯蓄に関する資料、住宅ローン減税に関する資料も並行して蒐集した。それにより、日本における住宅政策の歴史を多面的に理解する準備が進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度が最終年度であるため、積極的に成果を公表する。日本社会学会では、関連領域の研究者と同じ部会で報告できるよう、打ち合わせを始めている。住宅について異なるアプローチから取り組む研究者の報告を聞くことで、本研究の成果にとって重要な示唆を得ることが期待できる。数理社会学会では、階層論の視点に基づく職業キャリアと住宅に関するコメントおよび方法論上の示唆を得られる見通しである。学会報告後には『桃山学院大学総合研究所紀要』に論文を投稿する。さらに、紙幅の都合で紀要に掲載できなかった分析を『女性のライフイベントと家族関係』(仮題)に収めて刊行するため、編集者との打ち合わせも始めている。
|