2012 Fiscal Year Annual Research Report
アジア諸国における教育効果の向上に資する「学校を基盤とする経営」に関する比較研究
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22730668
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
正楽 藍 香川大学, インターナショナルオフィス, 講師 (40467676)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 教育学 / 比較教育 |
Research Abstract |
平成24(2012)年度は以下の内容を実施した。 [1] 学校の自律性と教育効果の論理の明示: SBMを導入する背景や動機は国や地域に応じてさまざまであるが、大きく、政治的動機と教育的動機に分けられる。また、アジア諸国に限らず、SBMはさまざまな国や地域で導入されている。ここでは、国内外の各種資料を確認し、学校のもつ権限の内容及び強弱に応じて分類を行った。その結果、本研究の対象となるアジア諸国、例えば、タイとカンボジア、インドネシアはいずれも、「ある程度強い」に分類され、各校に設置された委員会が学校での教育活動をめぐる意思決定を行っていることが分かった。 [2] 学校のもつ権限とその法的根拠の整理: [1]の分析結果を踏まえて、タイとカンボジア、インドネシアの3国それぞれの学校のもつ権限とその法的根拠を整理した。タイとインドネシアはアジア通貨危機以降の教育状況の低迷を受けて、SBMの導入に向けたさまざまな施策が実施され、法整備も進んだ。一方、カンボジアは国際援助主導のSBM導入となり、法的根拠のないまま学校へさまざまな権限が移譲されている。しかし、いずれの国も1990年代半ばから後半以降、教育法や教育省規則などが改正、施行され、SBMは未だ整備途上と言える。 [3] 学校の自律性と教育効果のつながりを実証: アジア諸国でSBMが本格的に開始されてからわずか10年余りであり、タイとカンボジア、インドネシアの事例で見たように、SBMをめぐるさまざまな施策もいまだ定着したとは言えない。そのため、SBMの教育効果を明らかにした先行研究は少ない。ここでは、タイとカンボジア、インドネシアを中心に、SBMがどのような効果をあげているのか、それらは、3国がSBMを導入した背景への解決策となっているのかを分析していく(平成25(2013)年度へ継続)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学校のもつ権限の内容及び強弱に応じて分類を行い、主な研究対象国をタイとカンボジア、インドネシアとした。これはこれら3国の教育的背景やSBMの内容の異同などによる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25(2013)年度は本研究課題の最終年度である。本研究の目的を達成するため、平成25年度は以下のことを計画している。 [3] 学校の自律性と教育効果のつながりを実証 平成24年度に実施した「学校のもつ権限とその法的根拠の整理」にもとづき、東南アジア諸国でのフィールドワークを実施する。フィールドワークはタイとカンボジア、インドネシアを予定しているが、状況に応じてこれら以外も候補とする。国ごとに整理した学校へ移譲された権限の内容及びその法的根拠を現地で確認すると共に、移譲された権限がどの程度学校現場へ浸透しているのかを、教職員と地方の教育行政官に対して調査する。 平成24年度の研究で明らかになったことは、タイとインドネシアにおいては法的根拠のもとSBMが導入されてきた一方、カンボジアでは法律の制定が後回しになっていることである。フィールドワークでは、法的根拠の有無やその内容が実際の学校現場へのSBMの浸透にどのように影響しているのかを探索する。また、行政と学校現場をつなぐ役割を果たすことを期待されている地方の教育行政官、そして教職員が学校へ移譲された権限をどの ように理解しているのか、どのように活用しているのかを分析する。 これらの分析と考察結果を踏まえて、SBMはそれぞれの国が抱える教育課題の解決に資する手段となり得ているのか、または、なり得る可能性をもっているのかを検討し、より効果的なSBMの実現に向けた課題と方策を検討する。
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