2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740205
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
深谷 有喜 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (40370465)
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Keywords | 表面構造 / 反射高速陽電子回折 |
Research Abstract |
原子サイズの一次元鎖は、バルクでは見られない低次元系特有の物性を発現するため、近年精力的に研究が進められている。しかし、その一次元原子鎖の研究は限られた系でしか行なわれておらず、さらにその構造物性評価には、一次元原子鎖の原子変位に対する敏感性が強く要求され、非常に大きな困難を伴う。本研究では、反射高速陽電子回折を用い、結晶表面上に構築した新しい一次元原子鎖の原子配置と電荷秩序形成のメカニズムを解明し、結晶表面における低次元構造の低温における金属絶縁体転移のメカニズムを解明する。 本年度は、最近見出された一次元原子鎖を形成するPt/Ge(001)表面について研究を行った。Ge(001)表面にサブモノレイヤーのPt原子を吸着させると、約1.6nmの幅を持つ原子鎖構造が形成する。この原子鎖は、約70Kでパイエルス転移を起こす可能性が報告されており、擬一次元的な物性の発現も期待されている。その原子配置に関しては、最表面原子がPt原子やGe原子で構成される原子鎖構造モデルが理論的に提案されているが、実験的にはまだ検証がされていない。そこで本研究では、最表面に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、Pt/Ge(001)表面上の一次元原子鎖の構造解析を試みた。構造解析に先立ち、走査型トンネル顕微鏡観察により、Pt/Ge(001)表面上の広い範囲で一次元原子鎖構造が均一に形成していることを確認した。Pt/Ge(001)表面から測定したRHEPDロッキング曲線は、Ge(001)清浄表面のものと比較して、視射角2~3°付近の鏡面反射強度が相対的に大きくなり、一次元原子鎖の形成に起因したロッキング曲線の変化が確認された。動力学的回折理論に基づく構造解析から、一次元原子鎖の原子配置の表面垂直成分に関しては、理論計算により提唱されているGe原子鎖モデルと良い一致を示すことが分かった。
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Research Products
(2 results)