2012 Fiscal Year Annual Research Report
複合測地学データに基づく奥羽脊梁山脈直下のレオロジー構造に関する研究
Project/Area Number |
22740287
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
太田 雄策 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50451513)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 粘弾性緩和 / GPS / 岩手・宮城内陸地震 |
Research Abstract |
平成24年度は,合成開口レーダーを用いた2008年岩手・宮城内陸地震震源域における地震後余効変動の検出とその解釈を主に行った.地震後余効変動を精密に捉えるためには,変位の時空間変化を詳細に知る必要がある.そのため解析にはPS (Permanent Scatterers) 干渉SAR時系列解析法を用いた.その結果,従来の干渉SAR解析では変位場を検出することが難しかった断層上盤側における比較的空間波長が短い地震後余効変動を明瞭に捉えることに成功した.また,断層下盤側における比較的空間的に長波長の変動も明瞭に捉えた.断層下盤側の変動は主に地震後の粘弾性緩和によって説明が可能である.一方で断層上盤側の空間波長の短い変動は断層面における非地震性すべり,もしくは火山に起因した地殻変動である可能性があることが分かった.これらの変動は,内陸地震発生後に様々な場所で短波長の余効変動が起きうることを示唆する結果である.また,粘弾性緩和によって説明が可能な断層下盤側の長波長変動は,震源域直下の粘弾性構造を把握するための重要な情報であるが,広域のGPSデータから求められた粘弾性緩和のモデルではそれらの全てを説明できず,震源域直下では特に上部地殻の厚さが薄い,もしくは下部地殻の粘性率が低いことを示唆する結果となった. また平成24年度においては,2011年3月11日に発生した東北太平洋沖地震(M9.0)の地震による2008年岩手・宮城内陸地震震源域に対する影響の評価を広域のGPSデータから解釈する作業を開始した.具体的には,東北地方太平洋沖地震による奥羽脊梁山脈下のレスポンスを検討することによって粘性率などのパラメータの情報を抽出するために,ひずみ場の時空間発展を詳細に検討する作業を始めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2008年岩手・宮城内陸地震の余効変動を詳細に調べ,震源域および奥羽脊梁山脈直下のレオロジー構造を把握するという当初の目的の内,余効変動を詳細に調べるという観点からは,複合測地データを駆使した結果,おおむね良好な結果が得られつつある.しかし,2011年に発生した東北地方太平洋沖地震の影響で,より長期間の余効変動のデータを継続して得ることが難しい状況にある.そこで本研究では視点を変え,2011年の地震による2008年岩手・宮城内陸地震震源域の応答を見ることで当初の目的を達成することを目指している.2011年東北地方太平洋沖地震による擾乱は大きいものの,平成24年度の成果では一部,奥羽脊梁山脈に沿ったひずみ異常を捉えつつあり,新しい視点で奥羽脊梁山脈直下のレオロジー構造を把握できる可能性がある.以上より,概ね進捗状況は良好であると自己判断する.
|
Strategy for Future Research Activity |
2011年3月11日に発生した東北太平洋沖地震(M9.0)は東北地方の広い範囲にわたって極めて大きな地殻変動を引き起こした. 本研究で対象としている2008年岩手・宮城内陸地震震源域における地震後の粘性緩和を見積もるためには, 2011年の地震の影響を的確に評価する必要性がある. そのため2011年地震が2008年地震の粘性緩和に対して与える影響を平成25年度も継続して調査する. また平成24年度に開始した,東北地方太平洋沖地震による奥羽脊梁山脈下のレスポンスを検討することによって粘性率などのパラメータの情報を抽出する試みを平成25年度 に蓄積されるデータを用いて, 継続して実施する. さらに平成24年度に干渉SAR解析の時系列解析手法を当該地域に適用し, 2008年岩手・宮城内陸地震後の長期的余効変動を時空間的に詳細に把握することに成功したが, その解釈を進め, その結果を学術論文としてまとめる. また岩手・宮城内陸地震震源域において水準測量を再度行い, 精密な上下変動場の抽出を目指す. また,このようにして得られた知見を統合した有限要素法によるモデル構築を行い, 奥羽脊梁山脈下のレオロジー構造の再現を目指す.
|
Research Products
(6 results)
-
[Journal Article] Episodic slow-slip events in the Japan subduction zone before the 2011 Tohoku-Oki earthquake2013
Author(s)
Ito, Y., R. Hino, M. Kido, H. Fujimoto, Y. Osada, D. Inazu, Y. Ohta, T. Iinuma, M. Ohzono, S. Miura, M. Mishina, K. Suzuki, T. Tsuji, and J. Ashi
-
Journal Title
Tectonophysics
Volume: 1
Pages: 1-10
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
[Journal Article] Geodetic constraints on afterslip characteristics following the March 9, 2011, Sanriku-oki earthquake, Japan2012
Author(s)
Ohta, Y., R. Hino, D. Inazu, M. Ohzono, Y. Ito, M. Mishina, T. Iinuma, J. Nakajima, Y. Osada, K. Suzuki, H. Fujimoto, K. Tachibana, T. Demachi, and S. Miura
-
Journal Title
Geophys. Res. Lett
Volume: 39
Pages: L16304
DOI
Peer Reviewed
-
-