Research Abstract |
高速道路の渋滞を引き起こす最も大きな要因であるサグ部では,ドライバーがその道路傾斜を正しく認識できず適切な加速ができないために,速度の揺らぎが生じる引き金となってしまい,結果的に渋滞が発生している.ドライバーがサグ部で道路傾斜を誤認してしまう現象は,縦断勾配錯視と呼ばれる錯視現象にあり,この錯視現象を解消することが今年度の目的である.この目的を達成するために,(1)縦断勾配錯視を解消し正しく道路傾斜を認識させるための方策の提案,(2)提案方策による道路傾斜認識の変化の検証を行った. (1)の縦断勾配錯視を解消する具体的な方策を以下に示す.提案する縦断勾配錯視解消策とは,実際の水平線となる手掛かりが道路環境上に乏しい場合に,ドライバーが道路傾斜を誤認してしまうことから,高速道路上の防音壁やトンネル壁にストライプ線を描き,傾斜認識の基準となる水平線として明示することで,縦断勾配錯視を解消するというものである.この方策は側壁にペイントを施すだけで実現できるため,コストの面においても実践的な方策であると言える. (2)の検証方法としては,提案手法に対して被験者実験を行い,得られたデータから道路傾斜認識の変化に提案手法が有効かどうかを検討するものである.具体的には,異なるストライプパターンの描かれたイラスト2枚,ストライプパターンの無いイラスト1枚,実際のミステリー坂における写真1枚の合計4枚をそれぞれ提示し,道路傾斜をどのように認識するかについて,5水準の選択によってのべ218名(外国人を含む)の回答を得た.この結果,ストライプパターンを水平線と認識し,同様の道路構造においてもストライプ線の角度が変わることで,道路面の傾斜認識が大きく変わることを明らかにした.
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