Research Abstract |
コンクリートの凍害劣化であるスケーリングは,凍結融解と塩化物浸透の複合作用により著しく促進される特徴を持つ。ここで劣化外力としての水や塩化物に着目すると,コンクリート表層の物質透過性は,これら劣化因子の侵入・拡散の程度を評価することが可能であり,耐凍害性の間接的評価指標となり得る。そこで本研究は,構造体コンクリートに適用可能な簡易型の透気試験による,耐凍害性の定量的評価手法を提案しようとするものである。平成22年度は,現位置測定可能な透気試験機を作製し,その試験機を用いた透気試験(以下,簡易透気試験と呼称)の信頼性や汎用性を確保するため,コンクリートの部材形状,表面含水率および気泡特性が透気性指標値に及ぼす影響について実験的に検討した。成果の概要を以下に述べる。(1)簡易透気試験機は,吸引鐘を用いた試験機をベースとして,計測機器の接続に無線通信を採用することで設置や計測の簡略化を図った。(2)透気性指標値は,コンクリートの部材断面厚さの増加に伴い高い値を示す傾向にあることを明らかにした。この結果は,試験体寸法の相違によってコンクリート表層に形成される脆弱層の性状が異なり,各種物性値に差異を生じることを示唆するものであって,コンクリート工学,特に実験研究の分野において基本的問題点を投じることとなる。(4)表面水分率4.5%以下と比較的乾燥状態のコンクリートにおいても,表面水分率の変動は透気性指標値に大きな影響を及ぼすことを確認した。簡易透気試験の再現性を確保し,実構造物に適用する為には,両者の関係について,さらに詳細な検討を加える必要がある。(5)透気性指標値は,空気量の増加に伴い高い値を示す傾向が得られ,両者は線形関係にある様相を示した。透気試験を耐凍害性評価手法として展開するためには,空気量が透気性指標値と耐凍害性の双方に及ぼす影響を十分に把握する必要がある。
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