Research Abstract |
本研究は,コンクリート構造物の耐凍害性(コンクリート表層部におけるスケーリング抵抗性)の評価手法として,コンクリートの透過性(透気性)を指標とする新たな手法を提案しようとするものである。昨年度は,測定対象部材の寸法や形状が透気性指標値に及ぼす影響を明らかにし,本研究で検討する原位置透気試験の測定条件を決定するとともに,透気性指標値に及ぼす表面水分率の影響や空気量の影響についても実験的に検討を加え,それぞれの相関性や影響の程度を明らかにしている。 今年度は,前年度の検討により決定した透気試験法の測定条件を踏襲した実験を行い,透気試験に及ぼす表面水分率の影響やミクロ的視点から見た気泡特性と透気性指標値の関係について,範囲を拡大し検討を行った。その結果,表面水分率を4.5%以上とした場合においても,表面水分率の増加により透気性指標値が低下する傾向は認められるものの,両者の間に明確な相関性は認められず,このことから,コンクリートの表層透気性は,表面水分率のみならずコンクリート内部の含水状態の影響も受ける可能性を指摘した。また,コンクリートの耐凍害性と強度の相関を持つ気泡特性(気泡間隔係数)については,本試験により得られる透気性指標値とおおむね対応することが認められた。さらに,透気試験を実施した供試体を対象に,スケーリング抵抗性試験(ASTMC672(室内試験))を実施した結果,本研究で検討する透気性指標値はASTM C672により得られるスケーリング量と比較的良い相関性を示すことを明らかとし,スケーリング抵抗性の評価指標として適用性を示した。しかし,本方法をスケーリング抵抗性の評価手法として提案するにあたり,性能評価区分等を示すことが重要と考えるが,評価結果の再現性や信頼性を確認し,スケーリング抵抗性を保証する具体的な透気性指標値を示すためには,さらに多くのデータ収集・蓄積が必須となる。
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