2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世建造物の年代測定を目指したツガ年輪パターンの拡充と産地推定
Project/Area Number |
22760497
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
藤井 裕之 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (30466304)
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Keywords | 近世建造物 / ツガ / 年輪年代 / 古材 / 解体修理 / 年輪パターン / 文化財 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近世建造物の用材として広く使われたツガに関して、現在の基準パターンをさらに拡充し暦年標準パターン(年輪幅の変動に関する基準資料)としての実用化を達成すること、そして地域ごとのパターンに基づいた木材産地の推定方法を模索することにある。引き続き今年度も、ツガを中心に古材、現生材の両方について年輪計測用試料の収集に努め、これと並行して年輪データの計測と分析をおこなった。今年度の収集は、近世大坂市場における木材流通の動向をふまえ、近畿地方の材に加えて、高知県産、および宮崎県産の材について重点的におこなうことにした。 現生材については、九州大学付属宮崎演習林(宮崎県椎葉村)のツガ生立木を対象に、東北大学と共同でコアサンプリングをおこなったほか、同村内の国有林から採取された円盤標本を譲り受けることができた。また、高知県旧大正町郷土資料館収蔵の円盤標本をはじめとした物件からも、年輪計測用の画像を取得した。一方、古材については、當麻奥院方丈(奈良県葛城市)や称念寺(同橿原市)、談山神社(同桜井市)などで現在実施されている解体修理工事の進捗に合わせるかたちで収集をすすめたほか、高知城の現存建造物(高知市)や、宮崎県椎葉村内の文化財建造物においても計測用画像を取得した。しかし、これまでのところ、基準パターンの延長に資する可能性のあるデータは得られていない。上記試料の年輪計測作業は、年度をまたいで2012年6月頃までかかる見込みで、今年度に収集した試料の質的評価や産地推定に関する検討は、計測完了を待っておこないたい。なお、これまでに作成したツガ古材パターンに付与した年代値に関して、昨年度収集した樹皮型ヒノキ材をもとに検討したところ、その妥当性についての傍証が得られたので、6月に開かれた日本文化財科学会第28回大会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上の試料等を得ることができ、そのことでは大きく進展したといえるが、そのために計画通りの年輪計測スケジュールをこなすととが難しく、計測作業の多くや分析とまとめを次年度に持ち越すことになった。これらを総合的に判断し、(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度収集分の年輪データの計測作業には遅れがみられるが、計測用の試料は当初の想定を上回るペースで集まっており、本研究課題の遂行に大きな問題はないと考える。次年度はまず計測作業とデータの整理・分析を急ぎ、可能ならばその段階における成果をとりまとめ、そのうえで6月中旬を目途に、残りの研究期間を効果的に使える方策(試料収集の優先順位など)を判断したい。
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