2011 Fiscal Year Annual Research Report
原核細胞の磁気オルガネラの生細胞イメージングー形成・機能メカニズムの解明ー
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22780063
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田岡 東 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (20401888)
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Keywords | 磁性 / 細菌 / 蛋白質 / イメージング / オルガネラ |
Research Abstract |
原核細胞は、原核細胞オルガネラと呼ばれる細胞内構造物を形成する。しかし、原核細胞オルガネラの動態・機能発現のメカニズムはほとんど未知である。本研究では、磁性細菌Magnetospirillum magneticum AMB-1の原核細胞オルガネラ「マグネトソーム」を構成する蛋白質を蛍光ラベルすることで、生細胞内でマグネトソームを可視化し、その動態の解明を目指す。 本年度は、平成22年度に構築した本細菌で機能する蛋白質発現ベクターを用いて、細胞骨格蛋白質MamKおよびマグネトソーム小胞局在蛋白質MamCのGFP融合蛋白質を発現するプラスミドベクターを構築し、接合により磁性細菌細胞を形質転換させた。形質転換した磁性細菌を蛍光顕微鏡下で観察したところ、MamK-GFPは細胞極間を結ぶ直線的な繊維状構造として、MamC-GFPは細胞の長軸に沿ったパッチ状の斑点としてそれぞれ観察され、細胞骨格およびマグネトソーム小胞の可視化に成功した。GFP融合蛋白質を発現させた磁性細菌を、ポリリジンコートした灌流培養用スライドに固定し、培養液中で長時間蛍光顕微鏡観察した。その結果、10時間までGFPの蛍光を検出でき、その局在の観察ができた。さらに、複数のマグネトソーム局在蛋白質を同時に細胞内で観察する為、GFPとは異なる蛍光波長をもつ蛍光蛋白質の発現を試みた。蛍光蛋白質Keima-Red,Azami-Green,Kusabira-Orange,およびHalotagの発現を試みたが、これらの蛋白質の蛍光シグナルを確認することはできなかった。一方でmCherryの発現を行ったところ、蛍光シグナルが確認された。今後は、mCherryを使用もしくは、使用コドンを本細菌での発現に最適化した蛍光蛋白質遺伝子を用意し、マグネトソーム微細構造の多重蛍光ラベルし、微細構造同士の相互作用の観察を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の「研究の目的」のうち、本年度までに「生細胞蛍光イメージング技術の確立」が完了し、マグネトソーム小胞および細胞骨格の蛍光蛋白質ラベルによる可視化に成功した。平成23年度から24年度にかけて「マグネトソーム微細構造の動態観察」および「マグネトソーム構成蛋白質遺伝子の変異株の作製」が進行中であり、おおむね計画どおり進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
マグネトソーム微細構造の動態観察については、平成23年度に構築した組換え磁性細菌を用いて、細胞分裂時のマグネトソーム小胞、および細胞骨格の動態を観察し、娘細胞への伝搬機構を検討する。また、細胞に磁場をかけ、細胞内のマグネトソームの局在の変化を観察する。これにより磁気応答中の細胞内のマグネトソームが観察できないかを検討する。マグネトソーム局在蛋白質に多重ラベルを目指した研究では、特に任意の蛍光色による多重ラベルに有効であるHalotagの発現に重点をおく。Halotag遺伝子のコドンの改変を行い磁性細菌細胞内での発現を検討する。マグネトソーム関連遺伝子欠損株(mamA,mamK,mamJ遺伝子欠損株)において生細胞内で、MamKもしくはMamC局在を可視化し、そのマグネトソームの細胞内動態、磁気応答を観察する。これにより、これまでの電子顕微鏡による観察では見逃されてきた生きた細胞中におけるマグネトソーム関連蛋白質の機能に迫る。
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