2012 Fiscal Year Annual Research Report
我が国の小麦市場における最適制度設計のための生物物理学ならびに経済学的研究
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22780203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 太郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (20540876)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 農業経済学 / 小麦 / 生物経済モデル |
Research Abstract |
本研究は、国内産食用小麦(国内流通量82万トン)と、国内産食用小麦と蛋白質含有量が近いために強い代替財としての性質を持つ豪州産麺用小麦「スタンダードホワイト」(同76万トン)を対象として、様々な農業保護政策・輸入政策下における日本国民の厚生の構成要素それぞれの期待値と確率分布を、厳密な生物・物理・経済モデルを用いて調査することを目的とするものである。 研究の最終目的は、(1)制度変更が小麦農家の行動変化を誘導し、(2)小麦農家の行動変化が小麦市場の異なる均衡点、延いては社会厚生および社会厚生分配をもたらす、という一連の因果関係を生物物理モデルと経済理論を用いて定性的ならびに定量的に説明することにある。これを達成するためには、研究の前半にてまず上述の(2)、とりわけ小麦農家の作付品目、品種および施肥量に関する選択のメカニズムを明らかにした上で、それを踏まえて(1)の制度設計問題に取り組むという手順を踏むことが相応しい。 研究3年目である本年度は、このメカニズムの解明を念頭に、以下の二つの活動に重点を置いた。まず、東京大学農場において引き続き小麦栽培実験を行い、播種時期、施肥量、品種等の違いにより、最終的な収量及び加工後の小麦粉の品質にどのような影響がもたらされるかを調査した。また、生育実験1年目のデータを用いて典型的農家の直面する期待利潤最大化問題を生物経済モデルにて表現し、栽培方法を変化させたときの期待利潤の変化について予備的なシミュレーションを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生物物理モデル構築のための圃場実験、経済モデル構築のための理論研究とも研究計画調書作成時に想定された速度で進んでおり、当初研究目的の達成が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き圃場実験においてデータを収集すると共に、上述の生物経済モデルを基に農家の選択メカニズムを、国内農業政策、特に作付面積・生産量およびタンパク質含有量の関数として表現する部分均衡モデルを構築し、天候や価格変動に由来する不確実性を加味した上で、社会的に最適な農業政策を導出する。
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