2011 Fiscal Year Annual Research Report
アストロサイトのカルシウムシグナルにより発現制御される翻訳抑制因子の機能解明
Project/Area Number |
22790243
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金丸 和典 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (10456105)
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Keywords | 神経・グリア相互作用 / アストロサイト / カルシウムシグナル / 翻訳抑制因子 |
Research Abstract |
グリア細胞の一種であるアストロサイトは、脳の形成・機能発現および維持に貢献すると考えられているが、その役割や作用機序には未だ不明な点が多い。本研究では、脳障害時にアストロサイト細胞内で起こるカルシウム濃度変化(Ca^<2+>シグナル)が、翻訳抑制因子pumilio-2(Pum2)の発現量を減少させることで細胞間接着タンパク質N-cadherinの発現量を増大させ、脳損傷後の神経保護作用に貢献することを解明した。 本研究ではまず、新たに作成した抗Pum2抗体を用いて生化学的・免疫組織化学的解析を行った。また、Pum2結合配列を持つN-cadherin RNAの3'非翻訳領域を付加したGFPレポーターを構築し、Pum2活性の評価系を確立した。その結果、アストロサイトCa^<2+>シグナルによるPum2発現増大、Pum2によるN-cadherin発現抑制が起こることを培養系で詳細に検証できた。また、成体マウス大脳皮質の損傷モデルを用い、これらの発現制御が生体内のアストロサイトでも起こることを見出した。その病理的意義を探るため、アストロサイトCa^<2+>シグナル不全マウスとアストロサイト特異的N-cadherinノックアウトマウスを入手・作成した。これらに脳損傷を与えたところ、いずれにおいても活性化アストロサイトの形成異常と生存ニューロン数の減少が観察された。 このように脳損傷時のアストロサイトCa^<2+>シグナルは、Pum2によるN-cadherin発現抑制を解除することによりN-cadherin発現量を増大させ、脳損傷後の神経細胞死を抑制するという、病理的に重要な経路を駆動させる。これは様々な脳疾患でみられる活性化アストロサイトに共通して起こる可能性が高く、グリア細胞を標的とした脳疾患の新たな治療戦略につながることが期待される。
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