2010 Fiscal Year Annual Research Report
質量分析を用いたタンパクの迅速高感度同定・定量法の開発
Project/Area Number |
22790607
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
金森 美江子 科学警察研究所, 法科学第三部, 主任研究官 (80356203)
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Keywords | 蛋白質 / プロテオーム / 分析化学 / 生化学 / ペプチドシーケンシング / ナノLC/MS |
Research Abstract |
モデルタンパクの一つであるリシンを用い、検出される消化ペプチドの種類や検出感度を調べるために、リシン(5μg)を用いたトリプシン溶液消化を行い、得られた消化ペプチド溶液をナノ液体クロマトグラフ/質量分析(LC/MS)により分析したところ、アミノ酸配列の一致率は、リシンA,B鎖で各々92,62%であった。このうち、MSでの検出強度の高い消化ペプチド6種(A,B鎖より各3本、そのうち各1本はリシン特有の配列)を選び、リシン同定のためのマーカーペプチドとした。LC/MSでのリシンの検出限界は、0.7ngであった。マーカーペプチドの同定手段として、フーリエ変換(FT)-MSによる消化ペプチドの精密質量測定、イオントラップ-MS/MSによるペプチドのアミノ酸配列同定を用いることにした。 試料からのリシン精製簡易前処理法として、ラクトース固定化モノリススピンカラムを作製し、その有用性を検討した。リシンは溶出画分のみに回収され、その回収率は49%であり、操作時間は30分と迅速かつ簡便であった。この溶出画分を用いたトリプシン消化条件を検討し、ラクトース固定化モノリススピンカラム抽出による試料前処理から、トリプシン消化、ナノLC/MSに至るラボ分析系を確立した。この一連の操作時間は最短5時間となり、リシン検出・同定が可能であった。この方法を、想定される法科学試料の一つで大量の夾雑物が含有される、ヒト血漿に適用した。ラクトース固定化モノリススピンカラム抽出により血漿中のリシンは溶出画分中に精製回収され、同時に血漿タンパクのうちの99%以上がスピンカラム処理により除去された。この溶出液をトリプシン消化に進めたところ、FT-MSによる分子関連イオンはすべて検出され、血漿において200ng/mLでのリシンマーカーペプチドの検出が可能であった。
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Research Products
(2 results)