2010 Fiscal Year Annual Research Report
肝幹・前駆細胞の分化増殖機構の解析と疾患治療モデルの構築
Project/Area Number |
22790632
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 寄附講座教員 (30372444)
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Keywords | 再生医学 / 移植 / 細胞・組織 / 発生・分化 / 肝疾患治療 / 肝細胞移植 |
Research Abstract |
我々は当該研究において、マウス肝幹・前駆細胞を用いて分化・増殖の分子機構をin vitroで解析し、その結果に基づいて目的分子の発現を調節した肝幹・前駆細胞による細胞移植を行い、さらに疾患モデルマウス由来iPS細胞から分化誘導した肝前駆細胞を用いた肝疾患治療モデルを示す研究を行い、今年度の成果として下記を得た。(1)マウス肝幹・前駆細胞の分離、培養、in vitroでの形質解析:マウス胎仔もしくは成体肝臓由来の初代肝幹・前駆細胞に対して、レンチウイルスベクターによって標的分子を強制発現・siRNA knock downをしつつ、増殖能、成熟肝細胞・胆管細胞への分化誘導、細胞遊走能についてin vitroで検定した。その結果、肝幹・前駆細胞の培養環境の最適化がより進められた(International Topic Conference招待講演にて発表)。(2)マウス肝幹・前駆細胞におけるWnt経路の機能に関する解析:Wnt経路の下流分子に関して、増殖能、成熟肝細胞・胆管細胞への分化誘導、細胞遊走能等について解析した。その結果、非古典的経路のリガンドであるWnt5aを添加した肝幹・前駆細胞は胆管細胞への分化誘導を遅延させることが示された。また肝幹・前駆細胞由来の細胞株を用いた検討でも、Wnt5aを添加すると擬似的胆管構造形成が抑制されることが示された。(3)ApoE欠損マウスをレシピエントとしたマウス肝幹・前駆細胞移植後の細胞動態の解析:成体由来肝細胞を用いて、高度の肝キメリズムが得られる移植系を確立した。ApoE欠損マウスに対して、野生型のマウス胎仔由来肝幹・前駆細胞を移植したところ、高脂血症が治癒し、移植した細胞がレシピエントの肝臓内で1年以上にわたって肝細胞として機能することを示した。さらに、成体マウス肝臓から分離した肝幹・前駆細胞についても検討し、移植細胞が長期間肝臓を再構築できることを示した(JDDW2010パネルディスカッションにて発表)。 以上、これらの成果に基づき、次年度も本研究を継続する予定である。
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