2011 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症疾患候補遺伝子PCM1のシナプスにおける機能解析
Project/Area Number |
22791125
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高木 学 岡山大学, 大学病院, 助教 (60452570)
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Keywords | PCM1 / ARHGEF11 / 統合失調症 / シナプス / BBS4 / 2型糖尿病 / 認知機能 / 機能解析 |
Research Abstract |
今年度は、PCM1のアミノ酸変異を伴う多型を日本人のサンプルで遺伝子解析を行った。統合失調症と強い相関が認められた一塩基多型である4628C→T(rs370429)(1543アミノ酸:トレオニン→イソロイシン)、その他にアミノ酸変異がおこり、PCM1の機能が変化する可能性があるrs412750、rs208753、rs17635381を、統合失調症患者群500例、健常群500人で遺伝子解析した。rs370429、rs208753は、先行研究において相関がみられる報告であったが、今回の研究では、全ての一塩基多型において、統合失調症患者と健常群の間に統計学的有意差を認めなかった。加えて、統合失調症の亜型(妄想型、破瓜型、緊張型)分類において、統計学的に有意差を認めなかった。別研究として、大阪大学を中心に、PCM1の日本人の統合失調症の遺伝子解析が報告され、我々とは異なる一塩基多型の解析が行われた。この研究においても、PCM1は日本人の統合失調症の発症と相関がないことが報告された(Hashimoto et.al.2011)。これにより、PCM1は、日本人の統合失調症の疾患候補遺伝子として有力ではない可能性が強く示唆され、PCM1蛋白の機能解析を行う重要性が低いと判断した。そこで、Disc1結合蛋白であり、Rhoタンパク質の活性化に関与するGEF(guanine nucleotid exchange factor)であるARHFGEF11の遺伝子解析を開始した。ARHGEF11はmRNAの発現が、統合失調症患者の剖検脳の視床において増加していたことが報告され、統合失調症との関連も示唆されている。また、ARHGEF11はインスリン分泌に関連する2型糖尿病の疾患候補遺伝子であり、統合失調症患者で2型糖尿病の発症率が高いこととの関連もあわせて検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PCM1の統合失調症の疾患候補遺伝子としての可能性を検討するため遺伝子解析を先に行った。その結果、PCM1は日本人の統合失調症の疾患候補遺伝子としての可能性は低いことが推測された。これにより、統合失調症の機序を解明するためにPCM1の機能解析を直接的に行う重要性は低いと思われ、別のDISC1結合蛋白であるARHGEF11遺伝子解析にシフトし、成果を得た上でPCM1蛋白との関係を検討することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
PCM1は日本人の統合失調症の疾患候補遺伝子としての可能性は低いことが推測された。「統合失調症の疾患候補遺伝子の機能解析」という当初の目的に添う範囲で、機能解析、遺伝子解析を主として行う蛋白を変更し解析を始め成果を得はじめている。研究にあたり必要な技術は、本研究の開始当初と同じものであり、十分可能であり、ARHGEF11の遺伝子解析の結果の後、機能解析に進み、そこで、PCM1蛋白の機能との関連を検討し、統合失調症の病態の解明を続けて行く。
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