2010 Fiscal Year Annual Research Report
下前頭回と上前頭回を連絡する白質神経線維に関する研究
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22791338
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
木下 雅史 金沢大学, 附属病院, 医員 (50525045)
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Keywords | 脳・神経 / 解剖学 / 神経科学 |
Research Abstract |
昨年度の研究にて、これまで未知であった下前頭回と上前頭回を連絡する神経繊維の同定に成功した。fiber dissection (FD)による新たな白質連合線維束の剖出・同定および従来の白質連合線維束との関連性についてホルマリン固定脳を用いて評価・検討し、FDにより得られた結果に基づき、生体内での白質連合線維束の走行状態を高磁場(3-tesla) MRIによるdiffusion tensor image-tractography (DTI-T)により描出し、さらにFDの結果と比較検討した。具体的に、8側の大脳を用いたFDにて、全検体において下前頭回(Brodmann領野44/45:Broca area)と上前頭回外側野(LSFG)間に連合線維を剖出した。また53例の大脳病変を有さない右利き脳神経外科患者を対象に行ったDTI-Tにて、全例に本線維束を認め、4例のみ右側に認めなかった。さらに本線維束は有意差をもって左側に広く分布し、この所見は特に男性に顕著であった。以上から、いわゆるBroca-LSFG pathwayの存在を明らかにしたと言える。またこれらの特徴から、本線維束が言語ネットワークに関係している可能性を示唆するともに、今後の脳神経外科手術における術中言語マッピングによりLSFGの機能について解明していく必要があると考えられた。(論文投稿中) また、言語ネットワークには側頭葉を走行する弓状束が主な機能を有するが、他に釣状束や下縦束も重要な役割を担うと近年報告されている。脳神経外科手術において優位半球側の側頭葉機能領域の温存は必須であり、脳深部の病変に対して様々な手術アプローチが報告されてきた。特に視交叉後方病変に対する手術は困難を極め、より術中視野を確保するには正常組織を損傷する可能性が高くなる。昨年度の研究にて、本領域に対する手術で得られる術野について、側頭葉牽引による影響を加味して解剖学的評価を行い、経半規管アプローチが有用であることを示した。 本年度は、FDとDTI-Tにより得られた本神経線維束の機能的側面を評価する。実際の脳器質的疾患(主に脳腫瘍)に対する脳外科手術の影響を評価し、本神経線維束が言語中枢に果たす役割について検討する予定である。
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