2010 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷に対する耐熱性ケラタナーゼの効果~慢性期投与と臨床応用に向けて
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22791370
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
今釜 史郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (40467288)
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Keywords | 脊髄損傷 / 慢性期治療 / ケラタン硫酸 / ケラタナーゼ / 酵素持続投与 / 運動機能回復 / 電気生理学的検討 / 齧歯類 |
Research Abstract |
ラット脊髄損傷モデルにおいて、慢性期にケラタン硫酸分解酵素であるケラタナーゼを投与することで運動機能回復に効果があるかを検討した。S.Dラット(雌、9週齢)を用い圧挫損傷を作製した。損傷直後浸透圧ポンプ付きマイクロチューブをクモ膜下に挿入し、薬剤投与モデルとした。実際の酵素投与は、therapeutic time windowや慢性期投与の効果を確認するため、ポンプを交換することにより損傷直後、損傷後3d、5d、7d、2w、4wから開始できるモデルを作成した。BBBスコア、Gridtest(%Grip)、Foot print analysisを損傷後10週間で評価したところ、現在のところ損傷後1w以内では薬剤の効果がみられる。損傷後2w以降で回復効果を認めるか否かについては、今後も検討を続ける。 さらに脊髄の組織切片を用い、脊髄の癒痕形成や炎症、GFAPの集積などを検討している。損傷後3dの投与では薬剤の効果がみられたが、損傷後4wではすでに瘢痕が形成されており、有意な差を認めない。神経系の組織学的検討を行うと、下肢運動機能回復の程度により、軸索伸長に有意差がみられた。組織学的検討についてはまだ個体数が少ないため、研究を更に重ねる必要がある。 電気生理学的検討も行っている。電気生理学的検討ではamplitude、latency、durationを評価しでいる。現在損傷後8wで検討しているが、過去の論文には損傷後数ヶ月で運動機能回復が見られたとする脊髄損傷慢性期治療の報告もあるため、適切な評価時期も含め、検討を行っているところである。 現在のところ、損傷後数日してからの投与では、下肢運動機能回復にケラタナーゼが有効である知見が得られている。今後さらなるevidenceを得るべく研究を進める予定である。
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