2011 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷に対する耐熱性ケラタナーゼの効果~慢性期投与と臨床応用に向けて
Project/Area Number |
22791370
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
今釜 史郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (40467288)
|
Keywords | 脊髄損傷 / 慢性期治療 / ケラタン硫酸 / ケラタナーゼ / 酵素持続投与 / 運動機能回復 / 電気生理学的検討 / 齧歯類 |
Research Abstract |
ラット脊髄損傷モデルにおいて、慢性期にケラタン硫酸分解酵素であるケラタナーゼを投与することで運動機能回復に効果があるかを検討した。S.Dラット(雌、9週齢)を用い圧挫損傷を作製した。損傷直後浸透庄ポンプ付きマイクロチューブをクモ膜下に挿入し、薬剤投与モデルとした。実際の酵素投与は、therapeutic time windowや慢性期投与の効果を確認するため、ポンプを交換することにより損傷直後、損傷後3d、5d、7d、2w、4wから開始できるモデルを作成した。BBBスコア、Grid test(%Grip)、Foot print analysisを損傷後10週間で評価したところ、損傷後1w以内では薬剤の効果がみられた。損傷後2wまでの酵素投与で回復効果を認めたが、4w以降では運動機能回復を認めなかった。 さらに脊髄の組織切片を用い、脊髄の瘢痕形成や炎症、GFAPの集積などを検討した。損傷後3dの投与では薬剤の効果がみられたが、損傷後4wではすでに瘢痕が形成されており、有意な差を認めなかった。神経系の組織学的検討を行うと、下肢運動機能回復の程度により、軸索伸長に有意差がみられた。 電気生理学的検討では、amplitude、latency、durationを評価した。損傷後2wで酵素投与したラットでは、損傷後8w時の検討に於いて、amplitude、latency、durationいずれも有意な回復を示した。 損傷後数日してからの投与で下肢運動機能回復にケラタナーゼが有効である知見が得られた。しかし、損傷直後の投与と比較すると、その回復程度はやや劣っていた。慢性期の薬剤投与は、既に形成された瘢痕が軸索伸長を阻害し、運動機能回復を妨げる。慢性期の脊髄損傷治療においては、瘢痕を減少させる試みや、複数の薬剤の併用、リハビリテーションの併用など多方面からの治療アプローチが必要と思われる。
|