2010 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌の腫瘍局所における包括的な免疫環境の解析と治療応用への基礎的研究
Project/Area Number |
22791527
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
濱西 潤三 京都大学, 医学研究科, 助教 (80378736)
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Keywords | 卵巣癌 / 免疫寛容 / 免疫環境 / 抗がん剤 / 免疫療法 |
Research Abstract |
腫瘍はその局所で免疫抑制因子を発現し、宿主免疫から逃避するシステムを獲得していることが近年報告されているが、これらを包括的に調べた研究はない。そこで、卵巣癌の免疫抑制因子発現と、腫瘍内に浸潤した免疫細胞の分布を解析し、全症例の免疫学的プロファイルによるグループ化を行ない、その臨床的意義を検討した。 そこで患者の同意を得て、卵巣癌患者70例の手術検体を用いて腫瘍の免疫抑制因子(TGF-b1、COX-1/-2、PD-L1/-L2)発現および、腫瘍内浸潤免疫細胞(CD4、CD8、CD57<甑細胞>、CDla<樹状細胞>、Foxp3、PD-1陽性細胞)の数を免疫組織染色により検討し、各症例の免疫学的プロファイルを作成した。プロファイルにて階層的クラスター解析を行い、分類されたクラスターと臨床病理因子および患者予後との関係について検討した。 その結果、階層的クラスター解析の結果、全症例は4クラスターに分類された。クラスター1は、腫瘍内CD4、CD8+T細胞が高度に浸潤しており、免疫抑制因子の発現は少なかった。一方、クラスター2は、腫瘍のCOX-1高発現かつ腫瘍内NK細胞が多く、クラスター3は腫瘍のPD-L2高発現と腫瘍内CD4+T細胞が少ない集団であった。クラスター4は腫瘍のPD-L1、TGFb1、COX-2の発現が高く、腫瘍内CD8+T細胞浸潤が最も少なかった。また、クラスター1は他の3クラスターに比して有意に予後良好であり、さらに多変量解析にてクラスター1は独立予後改善因子であった。 以上から卵巣癌局所の免疫状態を包括的に解析することによって局所の免疫状態を把握し、患者の予後を予測できる可能性が示され、今後、抗癌剤や免疫療法の前後で比較することで治療の個別化や効果予測への有用な指標となる可能性が示唆された。 本\研究結果については、現在論文投稿中である。
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