2011 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌の腫瘍局所における包括的な免疫環境の解析と治療応用への基礎的研究
Project/Area Number |
22791527
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
濱西 潤三 京都大学, 医学研究科, 助教 (80378736)
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Keywords | 卵巣癌 / 免疫寛容 / 免疫環境 / 抗がん剤 / 免疫療法 |
Research Abstract |
腫瘍はその局所で免疫抑制因子を発現し、宿主免疫から逃避する免疫逃避システムについて近年非常に注目されている。しかしこのような腫瘍局所の免疫状態を包括的に調べた研究は少ない。そこで卵巣癌の免疫抑制因子5種類の発現と、腫瘍内に浸潤した免疫細胞6因子の分布を個々に解析した後に、全症例の免疫学的プロファイルを作成しグループ化を行ない、その臨床的意義を検討した。卵巣癌患者70例の手術検体を用いて腫瘍の免疫抑制因子(TGF-b1、COX-1/2、PD-L1/2)発現および、腫瘍内浸潤免疫細胞(CD4、CD8、CD57、CD1a、Foxp3、PD-1陽性細胞数を免疫組織染色により検討した。その結果、これら11因子と患者予後に関連があったのは、PD-L1発現とCD8T細胞浸潤のみであり、他の9因子は、予後に差を認めなかった。次に各症例の免疫学的プロファイルを作成し、階層的クラスター解析を行い、分類されたクラスターと臨床病理因子および患者予後との関係について検討した結果、階層的クラスター解析の結果、全症例は4クラスターに分類された。クラスター1は、腫瘍内CD4、CD8+T細胞が高度に浸潤しており、免疫抑制因子の発現は少なかった。一方、ほかの3クラスターはいずれも免疫抑制因子発現が高く、クラスター1に比して有意に予後不良であった。逆に多変量解析にてクラスター1は独立予後改善因子であった。以上から卵巣癌局所の免疫状態を包括的に解析することで局所免疫状態から卵巣癌を分類できるとともに、患者の予後を予測できる可能性が示された。また、予後不良の3クラスターでそれぞれ免疫抑制因子が高発現していたことから、これらが治療の標的となる可能性もあり今後、抗癌剤や免疫治療の個別化や効果予測への有用な指標となる可能性が示唆された。本研究は論文発表した(Clin Immunol.2011;141:338)。
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