2011 Fiscal Year Annual Research Report
小児鼻咽腔における肺炎球菌の定量解析と肺炎球菌細菌叢の成立に関する研究
Project/Area Number |
22791623
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
小上 真史 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (90423946)
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Keywords | 肺炎球菌 / 肺炎球菌共通抗原 / イムノクロマトグラフィー法 |
Research Abstract |
臨床現場で抗菌薬の種類、量を決定するには培養検査やリアルタイムPCR法などで起炎菌を同定する必要があるが、いずれの方法も結果が判明するまでに時間がかかるという欠点がある。この欠点を克服するために、急性中耳炎や急性鼻副鼻腔炎の起炎菌として重要な肺炎球菌の抗原を迅速かつ簡便に検出する目的で開発中のイムノクロマトグラフィーキット(ODK-0501)を用いて培養検査およびリアルタイムPCR法との結果を比較し、一致率を検討した。 急性中耳炎患者より採取した中耳貯留液での培養検査との比較では感度50.9%、特異度90.5%、一致率81.5%であった。また、急性鼻副鼻腔炎患者より採取した鼻咽腔ぬぐい液を用いた検討では感度45.3%、特異度94.2%、一致率63.8%であった。次に、今回用いたイムノクロマトグラフィー法では、肺炎球菌しか検出できないため、検出された場合に起炎菌か常在菌かを判定することができない。そこで、半定量法である培養検査結果と定量法であるリアルタイムPCR法を用いて、菌量と陽性率の比較を行った。まず、培養検査との比較では起炎菌の可能性が高い、培養検査2+以上の検体では60%以上の感度を示したが、1+以下での培養検査結果では50%以下の感度であった。次に、本方法で陽性症例と陰性症例の検体の菌量をリアルタイムPCR法で比較したところ、イムノクロマトグラフィー法で陽性にでた検体において、有意に菌量が多い結果が得られた。以上から、本法は常在菌を検出しにくく、起炎菌を検出しやすいと考えられた。 以上の結果から、今回用いたイムノクロマトグラフィーキットは中耳貯留液や鼻咽腔ぬぐい液からの肺炎球菌抗原の迅速検査として有用であると考えられた。この方法を用いることにより、重症化しやすい肺炎球菌性の急性中耳炎や急性鼻副鼻腔炎を迅速に鑑別でき、適切な抗菌薬治療が行えることが可能になると考える。
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