2011 Fiscal Year Annual Research Report
骨細胞・骨細管系による破骨細胞性骨吸収と骨細胞の生存・死滅の調節機構
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22791760
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 礼子 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 専門研究員 (90333723)
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Keywords | 骨細胞 / 細胞・組織 / 破骨細胞 / 骨 / 歯学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、破骨細胞による骨吸収とその直下の骨基質内に存在する骨細胞との関連性について明らかにすることである。申請者らは、その解析部位として、常時、骨吸収が行われる歯槽骨の圧迫側(下顎第一臼歯・根間中隔近心面)を選択し、正常と卵巣摘出ラットを作製し組織化学的に検索した。正常ラットにおいて、下顎第一臼歯・根間中隔近心面では多数の酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRAP)陽性破骨細胞が骨表面上に局在するとともに、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性強陽性の骨芽細胞も局在し、活発な骨改造が認められた。骨細胞はsclerostinを産生することで骨芽細胞の活性を抑制し、同時に、破骨細胞形成や吸収活性にも影響を及ぼすと考えられている。そこで、根間中隔近心面側の骨細胞を観察すると、sclerostin陽性反応を有さない骨細胞はごく表層であることが観察された。一方、卵巣摘出により骨代謝回転が上昇した場合の下顎第一臼歯・根間中隔近心面では、さらに多数のTRAP陽性破骨細胞とALP強陽性骨芽細胞が骨表面上に局在し、非常に活発な骨改造を示した。また、同部位における骨細胞が広範囲わたってsclerostin陽性反応を有さないことも認められた。この現象の機序として、エストロゲン欠乏が骨細胞のアポトーシスを誘導しsclerostin産生を抑制する可能性も考えられたが、TUNEL法や電顕観察では骨細胞のアポトーシスは確認されなかった。一方、活発な骨改造が行われた結果、骨細胞・骨細管系の規則的配列が乱れてしまい、そのような部位における骨細胞からのsclerostin産生が著しく低下していることが明らかとなった。従って、破骨細胞の骨吸収および骨芽細胞との骨改造の結果、骨細胞からのsclerostin産生が低下することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、破骨細胞による骨吸収とその直下の骨基質内に存在する骨細胞との関連性について明らかにすることであり、本研究結果は、骨改造と骨細胞との間に何らかのシグナルが存在し、その結果、sclerostin産生が抑制されることを強く示唆している。骨細胞は骨基質内部に細胞性ネットワークを張り巡らせており、骨細胞から破骨細胞や骨改造に影響を与える機構があっても良く、本研究成果はその解明の一助となると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究成果は、よく知られているsclerostinが重要な役割を果たすことを示しているが、骨細管の内部を通過する他の物質や、骨細胞同士のシグナル伝達など、まだまだ解明しなければならない項目があり、今後、解析の必要性を感じる。
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