2011 Fiscal Year Annual Research Report
頭頸部扁平上皮癌におけるDKK遺伝子ファミリーの機能解析
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22791766
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
片瀬 直樹 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (30566071)
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Keywords | 頭頸部扁平上皮癌 / 遺伝子解析 / 癌抑制遺伝子 / Dickkopf(DKK)-3 / 機能解析 / 生存分析 / 免疫組織化学 / 転移制御 |
Research Abstract |
【目的】 頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)は世界的にも発生頻度の高い悪性腫瘍である。その発生には複数の癌抑制遺伝子の異常の蓄積が関わっているとされるが、詳細については不明な点が多く、腫瘍制御、転移抑制につながる研究が俟たれる。我々は、頭頸部扁平上皮癌の発生と転移に関わる因子の検索を行い、DKK遺伝子ファミリーに注目した。中でもDKK3は重要な癌抑制遺伝子とされ、その発現低下により腫瘍が発生すると報告されている。しかし、我々の研究ではHNSCCでは、DKK3はアクティブに発現しており、転移を促進する可能性が示唆されている。本年度は、DKK3発現の状態と予後の相関についてより詳細な生存分析を行うとともに、細胞株を用いた機能解析を行った。 【結果】 本年度の計画として、(1)HNSCCにおけるDKK3タンパク発現と生存解析、細胞株でのmRNA発現解析、(2)細胞株でのDKK3遺伝子の機能解析を実施した。(1)では、前年度のデータをもとに、詳細な生存解析を行ったところ、非常に興味深いことに、Dkk3を発現する患者は、有意に無疾患生存率が短く(p=0.038)、特に遠隔転移を生じるまでの期間(metastasis free survival)が有意に低い(p=0.013)ことが示された。この知見はHNSCCに独自のものであり、DKK3遺伝子がむしろ転移を促進しているかのような結果であった。この現象については考察を加え、国際英文雑誌Oncology Lettersに掲載された。 (2)では、HNSCC、胃癌、大腸癌等の細胞株を用いてmRNA発現を定量的に検討した。用いた細胞株のうち、HNSCC由来細胞株のみにDKK発現が認められたが、胃癌や大腸癌の細胞株では発現を認めなかった。次に、DKK3高発現を示す細胞株を選別し、siRNAによるRNA干渉でDKK3発現を行った際に、腫瘍の増殖や浸潤性が変化するかを検討した。(1)のデータを反映する結果が得られており、詳細については平成24年度の日本病理学会総会にて発表を行う。 【考察】 本研究で得られたデータは、HNSCCにおいてはDKK3はむしろ腫瘍の転移を促進する機能をもつ可能性を示唆している。ここからは、癌抑制遺伝子の機能も一様ではないこと、組織特異性がある可能性が示唆される。最終年度となる来年度は、より詳細な機能解析を加え、国際英文雑誌に報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初計画では、(1)組織材料でのDKK-3タンパク発現と細胞株でのmRNA発現解析、(2)細胞株を用いた機能解析、(3)動物実験による解析を行う予定としていた。現在のところ、実際に(1),(2)のほぼ全体が完了している。臨床データとDKK-3タンパク発現の状態については既に国際英文雑誌に論文発表を行っている。機能解析でも興味深いデータが得られ、平成24年の病理学会総会において発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記11に記載の如く、既にタンパク発現解析については2編の論文発表を行っている。(2)についても若干の追加データを加えて論文発表を行う予定である。計画のうち、動物実験については研究の方向性の開係で実施を保留し、機能解析で得られた知見を説明するための免疫二重染色を実施するように計画を変更、現在実施中である。最終年度には論文化し、国際英文雑誌に投稿できる見込みである。
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