2010 Fiscal Year Annual Research Report
リン酸代謝調節の側面からみた歯の形成機構:歯の形成不全の基礎的および前臨床的研究
Project/Area Number |
22791768
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉岡 広陽 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (50523411)
|
Keywords | リン酸代謝 / 石灰化 / 歯 / エナメル質 |
Research Abstract |
近年,無機リン酸(Pi)がシグナル分子として機能し,Pi代謝調節因子と協調して,歯や骨における細胞の分化や石灰化に関与していることが明らかになっている。本研究では,III型ナトリウム依存性リン酸トランスポーターPit1によるPiの細胞内への取り込みが歯の石灰化に果たす役割を解明することを目的とする。本年度は,歯胚発生過程において,Pi負荷により変動する固有のシグナル分子を網羅的に検索した。まず,胎生17.5日マウス臼歯歯胚を器官培養し,培養12日目に10mM β-グリセロリン酸を培養液に添加した。添加後48時間における約28,000個の遺伝子発現の変化をDNAマイクロアレイにより網羅的に解析した。その結果,Pi負荷により発現が上昇した遺伝子が11個,発現が減少した遺伝子が7個であった。これら遺伝子についてエナメル芽細胞株あるいは象牙芽細胞株における発現を確認するとともに,局在をinsitu hybridization法により解析し,その機能および石灰化との関連を推測した。中でも,Pi負荷により発現減少が確認されたプロテオグリカンの一種は,エナメル質や象牙質の形成に必須であることがノックアウトマウスの解析から示されている。来年度には,この分子の機能解析を中心に,リン酸代謝あるいはミネラル代謝異常によりもたらされる歯の形成不全に対する予防法および治療法の確立に向けた前臨床的研究を進めていく予定である。
|