2011 Fiscal Year Annual Research Report
リン酸代謝調節の側面からみた歯の形成機構:歯の形成不全の基礎的および前臨床的研究
Project/Area Number |
22791768
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉岡 広陽 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (50523411)
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Keywords | リン酸代謝 / 石灰化 / 歯 / エナメル質 |
Research Abstract |
近年,無機リン酸(Pi)がシグナル分子として機能し,Pi代謝調節因子と協調して,歯や骨における細胞の分化や石灰化に関与することが明らかになっている。例えば,慢性腎疾患では,高Pi血症の発症によりエナメル質および象牙質の形成異常が認められる。本研究では,Piの細胞内への取り込みが歯の石灰化に果たす役割を解明することを目的とする。昨年度は,培養噛胚へのPi負荷により発現調節される遺伝子群をDNAマイクロアレイにより網羅的に検索した。本年度は,発現の減少した遺伝子群の中からFibromodulin(Fmod)に着目し,詳細な解析を進めた。Fmodはsmall leucine rich proteoglycanファミリーに属し,ノックアウトマウスではエナメル質が薄層化することが報告されている。マウスエナメル芽細胞株にPiを負荷したところ,培養歯胚と同様にFmodの発現が低下した。この作用は,ナトリウム依存性Piトランスポーターの阻害剤phosphonoformic acidあるいはMEK阻害剤UO126により抑制された。一方,Pi負荷はERK1/2のリン酸化とEgr1の発現を促進したことから,Fmodの発現は,細胞内Piの上昇に引き続きERK1/2-Egr-1経路が活性化によって抑制されると考えられた。以上のことから,FmodはPi代謝異常を伴うエナメル質形成不全に関与することが示唆された。また,細胞外Piによる異所性のERKの活性化がFmodを含む多くの分子挙動を狂わせ,エナメル質形成不全を引き起こすと考えられた。
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