2011 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の中核的執政の変容と財政再建をめぐる政策形成過程の分析
Project/Area Number |
22830046
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
驛 賢太郎 神戸大学, 大学院・法学研究科, 講師 (30587811)
|
Keywords | 財政再建 / 政官関係 / 中核的執政(Core Executive)論 / 政治過程論 / 金融制度改革 / 官僚制(大蔵省・財務省)研究 / 日本政治 |
Research Abstract |
(1)平成23年度は、前年度に分析枠組みとして研究蓄積を行なったコア・エグゼクティヴ(Core Executive)論に従って、1990年代後半の橋本政権以降の財政再建に対する政府の取り組みを見た。橋本政権および小泉政権は、与党内部の基盤が必ずしも盤石ではなかったが、財政再建をはじめ様々な改革に成功している。こうした政権に共通するのは、従来の分権的なボトムアップ型の政策形成過程とは異なる、首相直属の集権的トップダウン型の政策立案機関を設立した点が挙げられる。財政再建に必要な専門性や党内支持(予算削減にともなう事業官庁や族議員の抵抗に対抗するリソース)を、調整官庁である旧大蔵・財務省などや外部専門家、派閥の長などから調達する場として、首相を中心とした政策立案の場が存在したことを確認した。 (2)また、民主党政権(鳩山政権)の予算編成過程についても分析を行なった。民主党政権における政策形成は分権的なものであったことを確認した。予算編成に必要な専門性を官僚からではなく、「事業仕分け」などに見られるように外部専門家からの調達を試みた。こうした試みは、一見、政治主導の実現と見られたが、官僚を政策過程から排除することで、むしろ予算編成や財政再建に必要な専門性を調達することができず、支出削減という観点によれば失敗に終わった。また、政府与党間の二重権力は、首相主導の集権的な政策形成を困難にし、民主党政権下のコア・エグゼクティヴ構造の分権性は、財政再建における失敗を説明する。((1)・(2)の成果については、紀要・学術雑誌等での好評を予定) (3)上記、研究と並行して、旧大蔵省・財務省研究を行なった。1970~90年代までの金融制度改革の政策形成過程について分析し、旧大蔵官僚(銀行局)は、バプル経済を回避・軽減する可能性のあった金融制度改革をリードしようとしていた事実を確認した。この成果については、書籍として公表することを予定している。
|