2011 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭の北東アジアにおける日露間の実業的なネットワークの広がり
Project/Area Number |
22830064
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
バールィシェフ エドワルド 島根県立大学, 総合政策学部, 助手 (00581125)
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Keywords | 日露関係史 / 国際関係史 / 対露貿易 / 第一次世界大戦 / 北東アジア |
Research Abstract |
平成23年度には、前年度の研究を発展させる形で、20世紀初頭の北東アジアにおける日露の実業的ネットワークの析出に務めた。研究実施計画に沿って、2011年6月中旬にウラジオストックの研究出張を行い、ロシア国立極東歴史公文書館(RGIADV)に所蔵される貴重な史料を参照することができた。科研費の一部は日本国立国会図書館、日本外務省外交資料館や三井文庫の所蔵史料の複写に当てられた。さらに、同年度2月後半から3月上旬にかけて、モスクワ研究出張を行い、ロシア国立軍事史資料館(RGVIA)やロシア帝国対外政策史料館(AVPRI)などで、第一次世界大戦期の日露経済関係に関わる種々の資料を発掘できた。こうして手に入れられた日露両国側の史料を綿密に分析し、20世紀初頭の北東アジアにおける日露実業関係の実像を再現してみた。この研究成果は「第一次世界大戦期の『日露兵器同盟』と両国間実業関係--『ブリネル&クズネツォーフ商会』を事例にして」という形をもって、『北東アジア研究』第23号(2012年5月上旬刊行予定)に近々に現れるはずである。日本でのロシア式3インチ砲弾信管の製造事業などを事例とする拙稿の結論は、ブリネル&クズネツォーフ商会は範多商会などに代表される在日イギリス資本だけでなく、三井物産、久原鉱業、鈴木商店や野澤組などの日本経済界との緊密な関係をつくりあげた結果、戦時中の日露実業関係において最重要な役割を果たしたことにある。さらに、同商会と日本の実業界との関係にはブリネルが管理していた銀鉛亜鉛のテチュへ鉱山をめぐる諸関係が重大な位置を占めていたこと、後藤新平らを中心とする東京の日露協会が日露経済関係の背景に大いに動いていたこと、ロシアの武器軍需品発注が日本の実業界に大きな影響を与えたことなどが分かった。
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Research Products
(4 results)