2011 Fiscal Year Annual Research Report
性別適合手術及び戸籍上の性別変更を終えた性同一性障害当事者の心理過程に関する研究
Project/Area Number |
22890029
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
浦尾 悠子 千葉大学, 大学院・看護学研究科, 助教 (40583860)
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Keywords | 性同一性障害 / 性別移行後 / 心理過程 |
Research Abstract |
1.研究の具体的内容 性別移行を終えたGID当事者が、社会的相互作用の中でどのような心理過程を経て、どのような心理状態に至るのかを帰納的に明らかにすることを目的に、性別移行後のGID当事者6名(MtF2名、FtM4名)を対象に半構造化面接を行い、内容の継続比較分析を行った。その結果、1)【身体的・社会的性別違和の解消による生きやすさの獲得】により2)【今を生きるありのままの自己の受け止め】ができるようになり3)【GID当事者としてではなく男性(女性)として生きる日常感覚】へと至る心理過程が明らかとなった。以下にそれぞれの内容を示す。 1)【身体的・社会的性別違和の解消による生きやすさの獲得】 身体的違和の解消によりボディーイメージの統合が促進され、戸籍変更により社会生活上の煩わしさが解消されることで、他者が認知する自己像に対する囚われが軽減し、自然な自己表出が可能となっていた。 2)【今を生きるありのままの自己の受け止め】 完全に男性(女性)になることはできないという現実を再認識しつつ、GID当事者としての自己の生に対する肯定的意味づけをしており、GID当事者として生きてきた性別移行前の自己に対しては心理的距離感を持っていた。 3)【GID当事者としてではなく男性(女性)として生きる日常感覚】 GID当事者であることを隠さずに生きることが憚られる社会の中で、男性(女性)として社会に適応しつつ、自分らしい生き方を追求しており、当事者であるという自己意識は徐々に低減していた。 2.研究の意義 性別移行後のGID当事者の心理面を明らかにした研究は国内外ともに殆どなされていないが、治療を希望する者は年々増加しており、今後は性別移行を終えたGID当事者が増加していくことが予測される。以上より、性別移行前後のGID当事者を支援する上で、性別移行後のGID当事者の心理過程を明らかにした本研究の意義は大きいものと考える。
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