Research Abstract |
本年度は,不動による関節軟骨の菲薄化のメカニズムについて検討するために,12週齢のWistar系雄性ラット30匹を無処置の対照群15匹と両側足関節をギプス包帯にて不動化する不動群15匹に無作為に振り分けて実験を実施した.不動期間は1,2,4週間とし,不動群のラットを5匹ずつ振り分け,対照群のラットは不動群のラットと週齢を合致させるため13,14,16週齢まで通常飼育を行った.また,関節軟骨における石灰化を評価するため,ラット腹腔内にカルセイン(1.6mg/Kg)を実験期間終了1,2週前の同時刻に投与した.各実験期間終了後は,ラットの両側関節を摘出し,右側足関節は4%パラホルムアルデヒドにて組緯固定をした後,脱灰・パラフィン包埋を行い,切片を作成した.そして,一部の切片に対してヘマトキシリン&エオジン染色を施し,病理観察を行った後に画像解析ソフトを用いて関節軟骨層の厚さを計測した.また,一部の切片に対しては軟骨基質のPGの動態についそ評価するためトルイジンブルー染色を施し,ブラインド法にて2人の観察者に軟骨基質染色性低下について点数化させた.一方,左足関節は,組織固定後に樹脂包埋し,薄切切片作成後に関節軟骨の石灰化の評価に供した.関節軟骨層の厚さを計測した結果,不動1週では対照群と不動群の間に有意差を認めず,不動2・4週では不動群の関節軟骨層の厚さは対照群のそれと比べて有意に低値であった.また,軟骨基質染色性低下について点数化した結果,不動1週では対照群と不動群の間に有意差を認めず,不動2・4週では不動群は対照群と比べ有意に高値であった.一方,カルセイン標識による関節軟骨の石灰化については,カルセインによる標識が不十分であり解析できなかった.以上の結果から,不動による関節軟骨層の菲薄化は不動2週より惹起されていると思われ,これは軟骨基質であるプロテオグリカンの減少に起因する可能性が示された.ただ,不動による関節軟骨の石灰化に関しては,その詳細を十分に検討できておらず,今後の検討課題であると思われる.
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