2023 Fiscal Year Annual Research Report
Extended study of the origins of heavy elements via comprehensive mass measurement of short-lived nuclides
Project/Area Number |
22H04946
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
和田 道治 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50240560)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 幸司 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, チームリーダー (00332247)
加治 大哉 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 上級技師 (00391912)
石山 博恒 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, チームリーダー (50321534)
小浦 寛之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 室長 (50391264)
羽場 宏光 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 室長 (60360624)
岸本 忠史 大阪大学, 核物理研究センター, 特任教授 (90134808)
西村 俊二 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 先任研究員 (90272137)
|
Project Period (FY) |
2022-04-27 – 2027-03-31
|
Keywords | 精密質量測定 / 多重反射型飛行時間測定式質量分光器 / 短寿命原子核 / 重元素の起源 / 励起関数 / 超重元素 / イオントラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、昨年に引き続き理研RIBFの主たる加速器(SRC)が故障のため、BigRIPS-ZeroDegree施設を利用した質量測定は実施できなかった。一方、RIBFの旧施設のGARIS施設を利用した超重元素の実験は実施できたと同時に、同装置におけるカリフォルニウム核分裂線源を用いた中性子過剰同位体の測定は順調に進んでいる。 超重元素の質量測定実験において、実験ごとに生成量が大きく異なる問題が生じていたため、その原因と対策をとるための新しい手法として、励起関数測定による一次ビームエネルギーの測定法を開発した。これは、ビームエネルギーを減速板を精密に回転させて変えながら、比較的反応断面積の大きいLa(V,xnyp)反応の多数の生成核種を同時に測定することによって3時間ほどで完了できる画期的な実験方法である。その結果、ビームエネルギーが1%程度ばらついていることが判明し、実験ごとに最初にこの測定を行って適切な減速フォイルを選定して、本測定に入るという手段を確立できた。 次世代ガスセルおよびMRTOF質量分光器の設計も進み、新型MRTOFおよびのガスセル外部真空層のハードウエアが完成した。ガスセル内部の改造の鍵となる高周波カーテン構造の製造装置も完成した。これらの新しい装置はBigRIPSの大きな運動量分散を持つ第5焦点面に直接置かれる計画であり、ニッケルなどの軽い元素の同位体ではこれまでの10倍程度の捕集性能が期待され、中性子数N=50の魔法数の解釈に極めて重要なNi-80同位体の測定も視野に入ることになる。 多核子移行反応による中性子過剰アクチノイドの生成および質量測定のパイロット実験を実施し、有効な成果を示すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加速器施設の故障によって、課題採択委員会で高い優先順位で採択されている実験が未実施であったが、2024年5月から沢山の質量測定マシンタイムが実行される予定となり、多くの新しい成果が期待できる。休止期間に改良型のガスセルおよびMRTOF質量分光器の設計がすすみ、ハードウエアの大半が完成できた。とりわけ新型ガスセルは内部に高周波カーテン構造を持ち、より高速かつ高効率で高速イオンをMRTOFに導くことができる。この装置は大きな運動量分散を持つBigRIPSの第5焦点面に直接設置され、これまでの10倍以上の性能向上が期待できる。 GARIS施設における超重元素の測定は非常に希少事象の測定なのでビームエネルギーが正しく設定されていないと大変困難であるが、新しい励起関数測定法を持ちいれば能率よく実験が進むはずである。 同装置においてカリフォルニウムの核分裂線源をつかったオフラインの測定は予想以上に新しい中性子過剰核の測定が可能になっており、抱負な測定時間を活用して多くの成果が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
加速器施設の運転再開をうけて、BigRIPS-SLOWRI施設では、Sn-100近傍核、中性子過剰希土類領域、N=Z領域の重要な原子核の精密質量測定が実施される予定である。MRTOFのβ-ToF検出器を有効に活用して短寿命核のより確かな同定および半減期測定を実施する。この実験では並行してβγ分光測定も実施する計画であり、元素合成過程の解明を大きく進歩させることが期待される。 改良型ガスセル+MRTOF装置はBigRIPSの運動量分散焦点面に置かれ、Ni-80などの希少かつ重要な質量測定が期待される。 超重元素ニホニウムの質量測定を実施するためのCa-48の分離研究は、最初の1 gを得るための開発を進めていく。
|