2022 Fiscal Year Research-status Report
Translation and the Systematic Study of Kant's Opus postumum (Fascicles I and VII)
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22K00021
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
田中 美紀子 神戸女子大学, 文学部, 教授 (80759613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 浩明 大阪工業大学, 工学部, 教授 (90440932)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | カント / オープス・ポストゥムム / 自然科学 / 神の概念 / 義務 / 人格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はカントの晩年の思考の膨大な覚書である、彼の遺稿群(オプス・ポストゥムム)の翻訳を目指すものであるが、令和4年度は、最晩年に書き留められた第一束(ドイツ語のアカデミー版カント全集第21巻)の翻訳を進めた。本研究のメンバーは、それぞれ分担するドイツ語原書の箇所の試訳を完成し、令和4年9月にオンラインで研究会を開催した。研究会では試訳の報告発表を行い、相互に批判・推敲を行いながら討議を繰り返し、日本語訳の精度を上げた。さらに、令和5年3月には二回目の研究会をメール会議という形で開催した。 第一束の草稿群の最初の部分は、80歳近いカントの健康状態が思わしくない頃に書かれたので、意味不明な箇所が多々あるし、哲学とは関係のない、日々の生活の単なるメモとみられるものも含まれている。老カントは最後の力を振り絞って、己の哲学体系を完成させようとあえいでいたのである。それは、彼が構想していたが、生前に刊行が叶わなかった著書の下書きに当たる覚書からうかがい知ることができる。 彼の超越論的哲学の最終的到達点は、「主体が世界と神概念を結合する」という主観的観念論であり、そこでは神は義務を持たない「人格」としてとらえられ、神の命令としての義務に従う人間もまた世界存在者としての「人格」そのものなのである。カントはこの考えを繰り返し書き留めているが、彼は神、世界、人間を三位一体ととらえていたと言える。また、「神の中にすべてを観る」というカントの言葉は、スピノザ的に解釈されうるが、カントのほかの著作で言及されるマールブランシュなどの影響も考慮に入れる必要があるということが再認識された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染症の収束はまだ完全に達成できていないので、対面での研究会を開催することはできなかったが、お互いで違う個所の試訳を完成し、それを相手に送信して確認してもらった。オンラインでの研究会では、問題となった個所について、詳しく議論して、試訳の推敲を行った。 研究を進めるにあたって、既存の英語抄訳、フランス語抄訳、イタリア語抄訳、スペイン語抄訳を比較参照しながらドイツ語原文を和訳することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、研究分担者とともにカント遺稿集の日本語訳を進めていく。令和5年度夏以降、100数十年ぶりに改訂される第二版カント全集がドイツで順次刊行されるので、それを参照しながら新しいアプローチをとり、独自のカント研究の道を拓いていく。本研究の成果として、研究代表者の所属する大学の令和5年度刊行の紀要に翻訳と解説を掲載する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症がいまだ収束しない状況において、学会、研究会等はすべてオンラインで開催された。したがって、当初予定していた旅費の予算は執行されなかった。 令和5年度は、新型コロナ感染症の様子を見ながら積極的に学会、研究会に参加したい。また、令和5年の夏以降、ドイツで改訂新版『カント全集』が順次刊行されていくので、原書とそれに係る研究書を購入する。
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