2023 Fiscal Year Research-status Report
伝来・評価・制作の検証に基づく近世大名家絵画コレクションの基礎的研究
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22K00167
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
龍澤 彩 金城学院大学, 文学部, 教授 (00342676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下原 美保 関西学院大学, 文学部, 教授 (20284862)
五十嵐 公一 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (50769982)
三宅 秀和 群馬県立女子大学, 文学部, 准教授 (50788875)
高岸 輝 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80416263)
井戸 美里 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (90704510)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 美術 / 絵画 / 大名文化 / 武家 |
Outline of Annual Research Achievements |
第二回「大名美術研究会」(2023年6月25日、東京大学)を開催した。研究代表者および分担者からは、龍澤彩「フリーア美術館所蔵「酒呑童子絵巻」について 昨年度報告を兼ねて」、髙岸輝「やまと絵屏風と毛利家―サントリー美術館所蔵「秋冬花鳥図屏風」をめぐって」、五十嵐公一「障壁画制作の手付―狩野宗秀の事例から」の発表が行われたほか、メンバー全員による討議と情報共有を行った。 研究代表者の龍澤は、本研究課題で実施した馬の博物館、宇和島伊達文化保存会ほかの調査などをふまえ、口頭発表”The Production of 17th-century Heike Paintings The European Association for Japanese Studies”(ヨーロッパ日本研究協会(EAJS)Ghent University Ghent, Belgium,2023年8月19日)を行った。また、同国際学会では、井戸美里も"Visions of Screen Painting of Sansui: Resonating Waka Poems and Painting," と題した発表を行っている。 また、大名道具形成期の絵画については、下原美保「住吉派興隆と如慶にみる新たなやまと絵について」(『大和文華』144号)、三宅秀和「狩野光信の装飾料紙 ―国立国会図書館所蔵「賦何船連歌」を中心に―」(『群馬県立女子大学紀要』45号)が刊行され、大名道具形成につながるコレクション形成史に関連する論考としては、髙岸輝「高階隆兼論(一)―『看聞日記』所載の「ういのせう絵」「強力女絵」「香助絵」と『古今著聞集』説話の絵巻群―」(『美術史論叢』40)、五十嵐公一「絵画の注文制作 狩野永徳の事例を中心として」(同)も刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、サントリー美術館(龍澤・髙岸、毛利家伝来「「秋冬花鳥図屏風」)、佐野市立吉澤記念館(龍澤・三宅、「源氏物語図屏風」)、千秋文庫(龍澤、佐竹家伝来絵画史料)、馬の博物館(龍澤、「酒呑童子図屏風」ほか)、宇和島市立伊達博物館(龍澤・髙岸、「唐人遊戯図屏風」ほか)などで作品調査を実施した。また、池田家文庫の史料(岡山藩)や秋田家史料(三春藩)、宇和島伊達家史料(宇和島藩)を入手し、検討を開始した。これまでに刊行されている図録類から、大名家伝来の絵画作品を抽出していく作業も、学生アルバイトの協力も得て進めることができた。研究メンバーがそれぞれに行った研究や調査の情報は、大名美術史研究会を開催して共有し、今後の研究に向けて意見交換を行っている。第2回大名美術史研究会では、いずれも東京大学大学院生(当時)の、鎌田満希「近世大名による絵巻・経の修理と箱の寄進―漆工史の視点から」、竹崎宏基「近世狩野派による絵画コレクションとその意義―奥絵師鍛冶橋家・木挽町家の旧蔵品特定と復元」の口頭発表もあり、本研究課題の構成メンバーの枠を超えた議論は、今後の研究の発展に資するものとなった。また、2023年度は、大名家伝来作品も展示される機会となった、東京富士美術館『源氏物語 The Tale of Genji 「源氏文化』の拡がり 絵画、工芸から現代アートまで」展に、龍澤、髙岸、三宅が企画協力し、図録に作品解説等を執筆し、研究の社会還元にも努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度に引き続き、宇和島伊達家伝来の絵画作品の調査を行う予定である。各美術館・博物館における修理や出陳の予定などによって、作品調査の可否は左右されるが、今年度もできる限り、大名家伝来の絵画作品の調査を実施したい。2024年度は最終年度となるため、第3回「大名美術史研究会」を開催し、情報共有をするとともに、次の研究課題に向けての議論を進める。本研究課題を通じて、さらに調査研究の必要性が見出された大名家もあるため、本研究課題の総括をするとともに、研究対象を拡大するなど、次の展開を検討したい。研究成果公開として、構成メンバーが各自、論文執筆を行う。研究代表者の龍澤は、今年度および来年度にかけて、2本の論文の刊行を予定している。
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Causes of Carryover |
計画当初、海外調査を考えて計上したが、円安の影響と、研究上、2023年度は国内調査を優先する必要が生じ、渡航を見送ったため。今年度の状況と、受け入れ機関の都合を勘案して再度検討し、調査を実施する計画である。
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Research Products
(10 results)