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2022 Fiscal Year Research-status Report

ドイツ語圏を中心とするヨーロッパにおける抒情詩の「話者」概念の展開

Research Project

Project/Area Number 22K00454
Research InstitutionDaito Bunka University

Principal Investigator

小野寺 賢一 (上賢一)  大東文化大学, 外国語学部, 准教授 (80581826)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 原 基晶  東海大学, 文化社会学部, 准教授 (50412218)
藤澤 博康  近畿大学, 文芸学部, 教授 (60300597)
松浦 菜美子  関西学院大学, 文学部, 准教授 (10880247)
Project Period (FY) 2022-04-01 – 2027-03-31
Keywordsリュリコロギー / 審級理論 / ヘルダーリン / シェイクスピア / ソネット / バトゥー / スタール夫人 / ペトラルカ
Outline of Annual Research Achievements

当初の研究計画に即して、抒情詩の「話者」をめぐる近代の言説の歴史的背景を中心に研究を進めた。小野寺は(1)ヘルダーリンの河流の隠喩からドイツにおける詩的言語の展開にかんする彼の省察を読み取り、これについて口頭発表を行った。(2)また18世紀半ば以降に生じた抒情詩をめぐる議論の文脈から、ヘルダーリンの未完の頌歌とその改作群ならびに詩学的文書を解釈し、その成果を論文として投稿した(査読つき・掲載決定済み)。(3)さらに18世紀後半から20世紀初頭にかけてドイツで展開された抒情詩の作者と作品ないしは発話主体との関係にかんする議論を概観・整理し、その成果を論文として投稿した(査読つき・掲載決定済み)。
藤澤は(4)本研究課題の研究報告会で重要参考文献2点について報告を行ったほか 、(5)『ロミオとジュリエット』が、1590年代にイギリスで流行したソネット連作とオウィディウスの恋愛詩の英語訳が醸成した抒情詩的エロティシズムの土壌のなかで創出されたことを、口頭発表において明らかにした。松浦は(6)18世紀中頃から19世紀初頭にかけてフランスで展開された抒情詩をめぐる議論について、バトゥーならびにスタール夫人を中心に概観・整理し、その成果を査読つき論文として発表したほか、(7)本研究課題の研究報告会で発表した。
計画にはなかった追加の研究として小野寺が(8)ドイツの最新の抒情詩理論について口頭発表を行い、(9)その内容を査読つき論文として発表した。また研究協力者として新たに参加した飯嶌剛将が(10)一般向けの講演においてペトラルカの『カンツォニエーレ』第1ソネットで描き出される「私」を恋愛抒情詩ならびに宗教的告白の二つの文脈から読み解いたほか、(11)本研究課題の研究報告会において『カンツォニエーレ』が時系列の異なる複数の「私」によって構成された作品であることを記号論の観点から論じた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の予定では研究代表者と分担者がそれぞれ1回、合計で4回の口頭発表を行う予定であった。しかし実際には合計で7回の口頭発表・報告が行われた。内訳は各種の学会での口頭発表3回、本研究課題の研究報告会での発表が2回、研究協力者による一般向けの講演と研究報告会での発表がそれぞれ1回である。さらに松浦と小野寺は来年度に行う予定であった論文での成果発表を本年度に行うことができた。なお小野寺の成果には2024年度以降実施予定であった理論にかんする研究が含まれている。また小野寺はこのほかにも2本の論文を執筆した。これらの論文はすでに査読をうけたうえで掲載が決定している。
原は2022年度に成果を残していないが、これは当初予定していた口頭発表を複数人のイタリア文学研究者が参加するシンポジウムの企画に切り替えたためである。シンポジウムの開催は2024年度あるいは2025年度を予定。参加者と企画内容については現在構想中である。また英語圏抒情詩とフランス語圏抒情詩についてもシンポジウムないしはワークショップを開催することになった。両企画ともに開催場所、協力者はおおむね決定しており、前者は2023年度、後者は2025年度に開催予定である。
さらに新たなプロジェクトとして、小野寺がクローチェを専門とするイタリア文学研究者ならびに森鴎外を専門とする日本文学研究者とともに、19世紀から20世紀初頭にかけての日本、ドイツ、イタリアにおける観念論美学の受容について、「抒情詩」という概念を中心に論じるシンポジウムを開催することになった。
このほかにも研究協力者として飯嶌剛将が加わり、招待講演や本研究課題の報告会でペトラルカについての研究発表を行うなど、当初の計画が大幅に拡張された。

Strategy for Future Research Activity

2023年度は予定通り各人が2022年度の成果を論文として発表するほか、予定していたドイツ語圏抒情詩にかんするシンポジウムを日本独文学会春季研究発表会において開催する。標題は「近現代ドイツ抒情詩の『話者』再考:『リュリコロギー』の批判的受容に基づくケーススタディ」である。
またこれまでの研究の結果、一人で一つの言語圏全体を覆うような研究を行うことは困難であることが改めて認識されたため、イタリア語圏・英語圏・フランス語圏抒情詩の研究においても協力者を募り、シンポジウムやワークショップを開催することになった。その準備や個々のシンポジウムの相談に時間を割くため、2022年度は年4回行っていた研究報告会を今後は年2回に減らすことにした。
英語圏抒情詩のシンポジウムは2023年度に関東で開催すべく順調に準備を進めている。イタリア語圏抒情詩のシンポジウムは2024年度に関西での開催を目指しているが、研究代表者の渡独と重なる可能性があるため、2025年度開催も視野にいれている。2025年度に関東で開催予定のフランス語圏抒情詩ワークショップは着実に準備が行われている。
イタリア語圏抒情詩の研究を充実させるために、2024年度以降に研究分担者をもう1名追加すべく検討を重ねている。さらに小野寺が2024年度にイタリア、日本、ドイツにおける観念論美学の受容にかんするシンポジウムを開催することで、イタリア語圏抒情詩の研究を補助することにした。
このほかにも2024年度には計画通り抒情詩の「話者」の理論にかんするシンポジウムを開催する予定である。開催場所は比較文学会関西支部例会に決定した。2025年度には以上の研究をふまえて、ダンテ、シェイクスピア、ゲーテ、そしてマラルメにかんするシンポジウムを計画通り開催したいと考えている。

Causes of Carryover

2024年度以降に研究分担者を追加する可能性があり、分担金をプールしておく必要が出てきたため。

  • Research Products

    (9 results)

All 2023 2022

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 2 results) Presentation (7 results) (of which Invited: 3 results)

  • [Journal Article] 抽象的な作者をめぐるリュリコロギーと審級理論のあいだの論争について2023

    • Author(s)
      小野寺 賢一
    • Journal Title

      ワセダ・ブレッター

      Volume: 30 Pages: 25~47

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 古典主義的抒情詩とロマン主義的抒情詩 : シャルル・バトゥーとスタール夫人2022

    • Author(s)
      松浦 菜美子
    • Journal Title

      Stella

      Volume: 41 Pages: 247~261

    • DOI

      10.15017/6632434

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] Lectura Petrarce:ペトラルカをどう読んでいくか2023

    • Author(s)
      飯嶌 剛将
    • Organizer
      二期会イタリア歌曲研究会
    • Invited
  • [Presentation] 抒情詩『カンツォニエーレ』の構造をめぐる問い:「記号論」と「主体」の観点から2023

    • Author(s)
      飯嶌 剛将
    • Organizer
      科学研究費助成事業「ドイツ語圏を中心とするヨーロッパにおける抒情詩の『話者』概念の展開」2022年度第3回研究報告会
  • [Presentation] David Lindley, 'Lyric I' とJane Kingsley-Smith, The Afterlife of Shakespeare's Sonnetsについて2022

    • Author(s)
      藤澤 博康
    • Organizer
      科学研究費助成事業「ドイツ語圏を中心とするヨーロッパにおける抒情詩の『話者』概念の展開」2022年度第1回研究報告会
  • [Presentation] 河流の隠喩:ドイツにおける詩的言語力育成についてのヘルダーリンの省察2022

    • Author(s)
      小野寺 賢一
    • Organizer
      日本ヘルダー学会夏季研究発表会
    • Invited
  • [Presentation] 抽象的な作者をめぐるリュリコロギーと審級理論のあいだの論争について2022

    • Author(s)
      小野寺 賢一
    • Organizer
      大東文化大学語学教育研究所2022年度第4回研究発表会
  • [Presentation] 五感から読む『ロミオとジュリエット』:エリザベス朝抒情詩的エロティシズムからの考察2022

    • Author(s)
      藤澤 博康
    • Organizer
      日本英文学会関西支部第17回大会
    • Invited
  • [Presentation] 古典主義的抒情詩とロマン主義的抒情詩:シャルル・バトゥーとスタール夫人2022

    • Author(s)
      松浦 菜美子
    • Organizer
      科学研究費助成事業「ドイツ語圏を中心とするヨーロッパにおける抒情詩の『話者』概念の展開」2022年度第2回研究報告会

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Published: 2023-12-25  

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