2022 Fiscal Year Research-status Report
インクルーシブな社会を目指す言語教育:ヒューマンライブラリーを再考する実践研究
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22K00656
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
福村 真紀子 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (50835866)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本間 祥子 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 助教 (00823717)
中川 正臣 城西国際大学, 国際人文学部, 准教授 (30796280)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ダイバーシティ教育と言語教育の融合 / インクルーシブな社会 / ヒューマンライブラリー / マイノリティとマジョリティ / 実践研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、言語教育の従来のあり方、つまり個人の言語運用能力の向上を目指した教育を批判し、ダイバーシティ教育の視点を加えた新たな形を提言することである。そのために、ヒューマンライブラリーという実践を行い、その実践自体を研究の対象とする。ヒューマンライブラリーとは、人を「本」に見立て、その人の語りを聞く人を「読者」とし、「本」と「読者」による対話の空間を図書館と捉え、企画・運営する活動である。企画・運営のコーディネーター的存在の者を「司書」に見立てている。 本研究の主軸は、このヒューマンライブラリーであるが、当該年度は言語文化教育研究学会交流委員会と連携して企画、運営、開催を行った。開催時期は、2023年1月だったが、新型コロナウィルス感染拡大防止の必要性によりオンラインで実施した。具体的には、ヒューマンライブラリーのテーマを「私の感じたマジョリティ性・マイノリティ性」に設定し、参加者全員でインクルーシブな社会の実現のために何ができるのかを考えることを目指した。「本」役は7人で、1枠30分の語りのセッションを14枠作った。倫理的配慮により、ヒューマンライブラリー実施当時の様子は録画はしなかったが、実施後、「本」役2人にヒューマンライブラリーを再現してもらい、録画を行った。同時にインタビューも実施し記録に残した。この録画による記録が、分析用のデータとなった。 また、理論研究として、研究代表者、分担者それぞれがダイバーシティ教育およびヒューマンライブラリーをテーマとする先行文献を収集して検討した。本検討は、研究の仕上げとなる論文執筆の土台となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
補助事業期間中の研究実施計画では、2022年度・2023年度に1回ずつヒューマンライブラリーを開催することになっており、予定通り2023年1月に企画、実施した。具体的な実施計画では、①10人の「本」の選定、②「司書」による「本」へのインタビューと「あらすじ」作成、③「あらすじ」を編集したブックリストの作成、④「読者」の募集と「本」と「読者」のマッチング、⑤開催、⑥企画と開催を含めた実践全体の振り返りという段取りだった。当該年度は、「本」が7人で目標の10人に満たなかったものの、このプロセス全てが順調に行われた。ただし、実施計画では、「本」と「読者」へアンケートを実施し、分析用のデータを収集することになっていたが、「本」の負担軽減のため、「読者」のみに実施した。また、「本」の語りを映像で記録することになっていたが、倫理的配慮から「本」全員の記録をその場で録画することは避け、後日2人の「本」にヒューマンライブラリーを再現してもらい、録画記録を得た。 その他、実施計画にあるインクルージョンおよびヒューマンライブラリーに関する理論研究は、研究メンバー各自で行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、研究実施計画通り、前年度同様のプロセスでヒューマンライブラリー開催に向けて準備を進める。ただし、前年度のように言語文化教育研究学会との共催ではなく、研究代表者と分担者のみが主催となって開催する方向である。この理由は、データ収集には倫理的配慮が必要であり、学会との共催に比べると、研究チームのみによる開催の方が調査協力者との関係をスムーズに構築でき、より安全にデータ収集することが望めるからである。 ヒューマンライブラリー開催後は、実践の振り返りを行った上でデータ分析をする。研究の成果については、2022年度までの研究成果をまとめ、2023年9月韓国において学会発表を予定している。この研究成果発表後、論文執筆の準備に取り掛かる。
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Causes of Carryover |
2022年度は、研究代表者および分担者それぞれがデータ保存と分析用にデバイス(PCまたはタブレット)を購入する予定だった。しかし、ヒューマンライブラリーを開催したものの、倫理的配慮の関係で当時の動画を録画することを取りやめたため大容量のデータをデバイスに保存する必要がなくなった。また、新型コロナウィルス感染拡大防止のため対面での研究会や学会が開催されなかったため、交通費の利用もなかった。2023年度は、ヒューマンライブラリーの主催及び枠組みを変更し、倫理的配慮をしながら、動画録画、大容量のデータ保存も予定している。また、海外における学会発表を予定している。使用計画は以下の通りである。 物品費(PCまたはタブレット3名分):600,000円、旅費(海外学会発表):450,000円、人件費・謝金(調査協力の謝金):60,000円、その他(音声データ文字起こし外注、動画編集外注、学会年会費など):337,235円
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