2022 Fiscal Year Research-status Report
Development and practice of program of Japanese language education based on the social situation in Tanzania
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22K00673
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
瀬戸 彩子 神田外語大学, 留学生別科, 講師 (80874619)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 海外の日本語教育 / タンザニア / 社会的文脈 / 学習者の背景 / 動機づけ / ビリーフス / レディネス / コースデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、タンザニアの高等教育機関で意義ある日本語教育を行うことを目指し、(1)基礎調査を通じて①社会環境、②学習者の背景、③教授上の困難点を探索し、それを踏まえ(2)プログラム開発を行うものである。令和4年度は(1)基礎調査を行い、①社会環境と③教授上の困難点において一定の成果を得た。 ①社会環境に関しては、文献調査と講話会を通じてタンザニアの言語状況及び教育言語政策、外国語教育に対する理解を深めた。タンザニアの人々は、民族語・スワヒリ語・英語にそれぞれ異なる意識を持ち、特に英語を「階層移動のための技術」として捉えている場合が多いことがわかった。対して「外国語としての日本語」の教育をタンザニアにおいてどう位置付けるか、プログラム開発にあたり慎重に考察する必要がある。そのため今後も、文献調査等を通じ、国家ビジョンや高等教育政策、外国語教育政策を把握していく。 ③教授上の困難点については、タンザニア唯一の日本語教育機関・国立ドドマ大学で教師経験のあるJICA海外協力隊関係者6名へのインタビュー調査を実施し、学科運営に苦心する当時の様子が明らかとなった。当初は、プログラムデザインに参照できる情報収集をねらいとし、タンザニアの大学生が日本語学習において苦手とする部分やクラス運営の問題等の抽出を期待していたが、それに関する語りはほとんど出ず、他方、大学内でのステークホルダーとの交渉の難しさや学科運営の中・長期計画立案の重要性などを発見できた。この調査結果は、今後論文として発表予定である。 その他の実績として、タンザニアの日本語教育事情を紹介した論文の発表を挙げたい(「タンザニアの日本語教育の可能―知的好奇心に応えるために―」『日本語学』41巻4号)。これは「遠い国」の日本語学習現場の一例として国内の学習機会や課題等を概説したもので、上記基礎調査の結果も一部紹介することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度中にタンザニアに渡航し、代表者が以前所属した国立ドドマ大学の現役学生及び卒業生を対象に動機づけ及び学習意味を調査予定だったが、懇意にしていた現地協力者(元人文社会学カレッジ長)が亡くなったことから手続きが滞り、渡航がかなわなかった。そのため計画を変更し、動機づけについては平成30年に、学習意味については令和3年に収集したデータを用いて、令和5年度以降に分析作業を進めることとする。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、引き続き(1)基礎調査と成果発表に取り組む。まず、ドドマ大学元教授経験者へのインタビューデータを分析したものを論文にまとめる。次に、過去に収集した動機づけと学習意味のデータ分析作業を進める。また、令和5年度中にタンザニア渡航し、ビリーフの調査を行う。また、令和4年度の講話会を受けて、プログラムデザインにあたりレディネスに関する情報の必要性を感じたので、あわせてデータ収集を行いたい。
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Causes of Carryover |
現地協力者が亡くなったことで渡航に係る倫理審査やレター発行の相談ができなくなり、令和4年度中の渡航を断念し海外旅費未使用となったため。令和5年度に紹介を通じて新たなステークホルダーと交渉し、調査可能な教育機関を訪問する際、海外旅費として利用できればと思う。
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