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2023 Fiscal Year Research-status Report

職人と地方公設試験研究機関の関係史から構想する津軽塗の多様性の復権と技術継承

Research Project

Project/Area Number 22K01089
Research InstitutionHirosaki University

Principal Investigator

近藤 史  弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (20512239)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 鳴海 藍  地方独立行政法人青森県産業技術センター, 工業部門, 主任研究員 (40801163)
葉山 茂  弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (60592780)
高橋 憲人  弘前大学, 教育学部, 助教 (30848312)
Project Period (FY) 2022-04-01 – 2027-03-31
Keywords伝統工芸 / 技術継承 / 地場産業振興 / 科学コミュニケーション
Outline of Annual Research Achievements

2023年度は、以下を実施した。①デジタルアーカイブ構築:Microsoft Access を用い、青森県工業試験場時代に制作された津軽塗手板310枚をデジタルアーカイブ化した。
②アクションリサーチ:①でアーカイブ化した津軽塗手板の一部と、本プロジェクトで前年度に運用開始した津軽塗情報サイト「IPADA」(https://ipada-urushi.com)を活用したワークショップを企画・実施した。津軽塗の中でも特に多様性に富む「仕掛け」に焦点を当てた内容とし、弘前大学人文社会科学部地域行動コース「社会調査実習」の受講学生21名を対象としておこなった。鳴海が企画し、津軽漆連の若手塗師3名にワークショップ講師を依頼し、近藤と髙橋は実施をサポートするとともに参加学生と塗師らのコミュニケーションを参与観察した。
③津軽塗産地の現代史におけるイノベーション実装プロセスの解明:津軽塗産地と公設試験研究機関である青森県工業試験場との関わりを明らかにするため、元試験場研究員の小林伸好氏へインタビュー調査を行った。小林氏は「津軽塗のデザイン開発」について、伝統的工芸品産業指定により多数ある津軽塗の内の4技法(唐塗・ななこ塗・紋紗塗・錦塗)のみが注目されていることに疑問を持ったことをきっかけに、「津軽塗の再評価」「自由パターンの再現性」をテーマとし、昭和60~平成3年まで継続的に研究をされていたことがわかった。
④塗師による素材生産への活動の広がりの解明:塗師への聞き取り調査によって、津軽塗産地の業界団体が昭和50年頃にウルシ植樹や漆掻きの研修を実施し、現在も一部の塗師たちが自ら取り組みを継続して自家製(地場産)漆を漆器制作に用いていること、近年、障がい者就労支援施設が漆の苗木生産を開始し、前述の塗師がそのサポートをおこなっていることがわかった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

資料調査と聞き取り調査によって、津軽塗産地の現代史におけるイノベーション実装プロセスと、そこに関与した団体・人びとのネットワークについて、前年度に整理した視点にもとづいて、個別事例調査を始めることができた。
また、前年度に運用開始したデジタルアーカイブ(津軽塗情報サイト「IPADA」)について、情報の収集・蓄積をすすめるとともに、「津軽漆連」のメンバーらとの意見交換を通して、より職人と消費者がつながりやすい工夫を検討している。
アクションリサーチ(デジタルアーカイブを教材としたワークショップの実施と評価)については、2022年度は新型コロナウィルス感染症流行によってワークショップを実施できなかったが、2023年度に初めてワークショップを実施することができた。漆のかわりにアクリル絵具とモデリングペーストを使って津軽塗の多様な模様が生まれる仕組み(仕掛けと研ぎ出し)を体験学習するプログラムでは、材料の特性に起因して、講師役の塗師が指導の際に戸惑う場面もあった。今後、事前の研修をとりいれるなど改良をおこなう予定である。

Strategy for Future Research Activity

引き続き、文献や資料の調査をすすめるとともに、津軽塗の職人や周辺産業従事者、地方公設試験研究機関の技官OBらへの聞き取り調査をおこない、津軽塗のデザインや産業構造にかんするイノベーションの個別事例に注目して深掘りしていく。調査から得た知見を整理し、デジタルアーカイブ(津軽塗情報サイト
「IPADA」)の内容の充実をはかる。また、デジタルアーカイブを教材として若手職人と一般消費者の交流ワークショップを実施し、彼らのコミュニケーションを観察・評価することを通して、デジタルアーカイブの内容を検証・改良する。

Causes of Carryover

デジタルアーカイブ(津軽塗情報サイト「IPADA」)の活用方法の検討について、今年度は鳴海と近藤が中心となって試行的にワークショップを実施したことから、これにかんする葉山の分担金支出がなかった。この次年度使用額については、葉山が2024度の分担金とあわせて全額、自身の役割分担遂行のために使用予定である。また、髙橋の分担金について、旅費・謝金等に使用して100円未満の少額が残ったため、これについては次年度の分担金とあわせて全額、髙橋が自身の役割分担遂行のために使用予定である。

Remarks

2023年9月に、分担者の髙橋憲人が第3回 日本サウンドスケープ協会 奨励賞を受賞( 著書 『環境が芸術になるとき―肌理の芸術論』への評価)

  • Research Products

    (10 results)

All 2024 2023 Other

All Journal Article (5 results) Presentation (4 results) (of which Invited: 2 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] 津軽塗に創造の余地を取り戻す―塗師・大学・地方公設試験研究期間の協働の試み2024

    • Author(s)
      近藤史
    • Journal Title

      フィールドワークという探索活動の可能性

      Volume: 2 Pages: 28-43

  • [Journal Article] 県内工芸の輸送機産業等に対する製品に関する試験・研究開発-研ぎ出し変り塗の製品開発研究 第6報2024

    • Author(s)
      鳴海藍・小松勇・濱田圭
    • Journal Title

      青森県産業技術センター工業部門事業報告書

      Volume: 2023度版 Pages: 58-58

  • [Journal Article] 総合討論(令和5年度地域未来創生センターフォーラム「市民協業時代における大学的フィールドワークの可能性」)2024

    • Author(s)
      髙橋憲人, 辻本侑生, 近藤史, 葉山茂, 内藤直樹, 木村周平, 白石壮一郎
    • Journal Title

      フィールドワークという探索活動の可能性

      Volume: 2 Pages: 85-105

  • [Journal Article] 地域研究の手段としてのフィールドワークの意義に関する多分野横断的検討2024

    • Author(s)
      葉山茂, 白石壮一郎, 近藤史, 新永悠人, 松井歩, 髙島克史, 林彦櫻, 佐々木あすか, 古川祐貴, 泉直亮, 諏訪淳一郎, 髙橋憲人, 辻本侑生
    • Journal Title

      地域未来創生センタージャーナル

      Volume: 10 Pages: 43-48

  • [Journal Article] 応答しつづけること―人新世でウェルビーイングを追求するために2023

    • Author(s)
      髙橋憲人
    • Journal Title

      音楽教育実践ジャーナル

      Volume: 21 Pages: 15-25

  • [Presentation] 津軽塗に創造の余地を取り戻す―塗師・大学・地方公設試験研究機関の協働の試み2023

    • Author(s)
      近藤史
    • Organizer
      令和5年度地域未来創生センターフォーラム「市民協業時代における大学的フィールドワークの可能性」
  • [Presentation] 総合討論2023

    • Author(s)
      髙橋憲人, 木村周平, 白石壮一郎, 辻本侑生, 近藤史, 葉山茂, 内藤直樹
    • Organizer
      令和5年度地域未来創生センターフォーラム「市民協業時代における大学的フィールドワークの可能性」
  • [Presentation] 現代に継ぐ工芸『津軽塗』の世界2023

    • Author(s)
      髙橋憲人, 木村崇宏
    • Organizer
      大館学び大学オリジナル講座
    • Invited
  • [Presentation] 音楽教育とウェルビーイング:次世代に芸術が果たす役割を考える2023

    • Author(s)
      小沼純一, 松永加代子, 沼田里衣, 髙橋憲人, 今田匡彦
    • Organizer
      日本音楽教育学会第54回大会
    • Invited
  • [Remarks] 津軽塗情報サイト「IPADA」

    • URL

      https://ipada-urushi.com/

URL: 

Published: 2024-12-25  

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