2022 Fiscal Year Research-status Report
「価値ある労働」の機会保障と間接差別規制に関する比較法研究
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22K01194
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
石田 信平 専修大学, 法務研究科, 教授 (20506513)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 間接差別 / 雇用差別禁止法 / 潜在能力アプローチ / Capability Approach |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、差別とは何か、といった点に関する基礎的研究を行った。近時、差別禁止法に関する基礎的・哲学的な研究成果が数多く公表されており、これらに関する文献研究に取り組んだ(Kasper Lippert Raumussen, Born Free and Equal?: Philosophical Inquiry into the Nature of Discrimination, OUP,2014; Tarunabh khaitan,A Theory of Discrimination Law, OUP, 2015など)。 また、イギリス平等法に焦点を当てて、①間接差別と他の差別禁止行為(直接差別、関連差別、認識差別)の区分、②ポジティブ・アクションや障がい差別・宗教(信条)差別における合理的配慮との関係、③合理的理由の抗弁、④間接差別規制における比較対象決定の特徴、⑤直接差別と比較した、間接差別に対する救済の特徴、に関する文献研究を進めたが、とくに、①間接差別と直接差別の関係について検討を深めた。直接差別とは、差別禁止事由を理由とする差別的取り扱い(less favorable treatment)であるが、(ア)明確には差別禁止事由に基づいているとはいえない場合、(イ)使用者に差別的意図がない場合、にどう考えるべきかが問題となってきている。前者(ア)については、たとえば、移民労働を理由とする差別が人種を理由とする差別といえるのか、といった事案で問題となり、この点については差別禁止事由と実際の差別理由とが不可分に結び付いているかが問われることになる。また、後者(イ)については、意図を必要とする見方から客観的な理由を問題とする視点への移行がみられる。使用者に差別の意図がなかったとしても、客観的にみて明らかに差別禁止事由を理由とした差別的取り扱いである場合には直接差別に該当すると考えられてきている。 令和4年度は、以上ような点について検討を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
他の研究業務との兼ね合いがあり、令和4年度は本研究課題について順調に進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度、4年度の遅れを取り戻すために、精力的に本研究課題に関する研究を進めることとする。令和4年度における基礎的研究を基礎として、イギリス平等法における裁判例の展開、各雇用差別禁止事由における間接差別規制の位置付けなどについて検討を加える。
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Causes of Carryover |
実際に支給された研究費が、申請額よりも大幅に減額されたためPCの購入を見送ったが、そのために次年度使用額が生じた。
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